サマセット7

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3のサマセット7のレビュー・感想・評価

4.3
MCU32作品目。ガーディアンズオブギャラクシー3部作の劇場版3作目。
監督はGoG3作通じて、「スーパー!」「ザスーサイドスクワッド極悪党集結」のジェームズ・ガン。
主演は「ジュラシックワールド」「トゥモローウォー」のクリス・プラット。

[あらすじ]
エンドゲームを生き延びたガーディアンズは巨大宇宙船ノーウェアに本部を設けて、新しい生活を送っていた。
しかし、ガモーラに対して複雑な想いを抱くピーター・クイル(クリス・プラット)は1人ウジウジして、皆の心配を買っていた。
そんな中、ガーディアンズは突然強力なパワーを持つアダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)の襲撃を受ける…。

[情報]
未曾有のアメコミ映像化大河プロジェクト・マーベルシネマティックユニバース(MCU)において、特に高い評価を受けるガーディアンズオブギャラクシー3部作の、最後を飾る作品。
なお、2作目と今作の間には、Disney+配信限定のGoGスペシャルホリデースペシャルがある。

監督のジェームズ・ガンは、一作目、二作目のガーディアンズオブギャラクシーにおいて高い評価を受けたが、2018年過去の不適切な発言を問題にされて、一度MCUから解雇される。
しかし、ドラックス役のデイヴ・バウティスタが3作目でガン監督の脚本を使わないなら自分も出演を辞退することを表明。他のキャストらも、ガン監督の復帰を求めるに及んで、2019年、マーベルスタジオはガン監督の復帰を認めた。

フリーの時期のガン監督に近づいたのが、マーベルと並ぶアメコミの老舗DC。
ガンは「ザスーサイドスクワッド」リブート作を傑作に仕上げ、その後、DCユニバースの統括責任者に選任される。
こうした経緯からして、おそらく、今作はガン監督にとって最後のマーベル作品となることが予想される。

ガーディアンズオブギャラクシー原作は、マーベルコミックの中でもマイナーなシリーズ。
銀河を股にかけるスペースオペラであること、個性豊かなアウトローたちによるチームものであること、といった特徴をもつ。
さらにジェームズ・ガンの映画作品としてのGoGは、ポップミュージックを効果的に配置していること、ギャグ満載のコメディ・ドラマであること、ポップでキャッチーな作風であることなどで知られる。

本日2023年5月5日は日本公開3日目。アメリカでの公開日が今日らしい。
現時点で、著名批評サイトRottenTomatoesでは、批評家支持率80%、一般層支持率96%。
IMDBではレーティング8.3。
特に一般層から、非常に高い評価を受けているように見える。

[見どころ]
今作の主役は、高い知能を持つ二足歩行アライグマ・ロケット!!
外見は可愛いアライグマ、中身は渋い中年傭兵という彼の、凄惨な過去とは!!??
いつものメンバーのわちゃわちゃしたやりとり!
またスクリーンに、あいつらが帰って来た!!!
ネビュラ、マンティス、ドラックスのトリオ、相変わらずの奇天烈なやりとりが、最高!!!
悩めるピーターと"現在の"ガモーラの、複雑な関係の顛末は!??
気合いの入ったアクション!
アメコミ映画の最高を更新する、決めのカットにこだわった演出!!!
相変わらずの、懐かしきポップミュージック使い!!
そして、笑いと涙、グロテスクと感動が同居する、ジェットコースターのようなストーリー!!!
3部作の最終作にふさわしい完成度!!!

[感想]
お見事!!
ジェームズ・ガンは、アメコミヒーロー映画の黄金律を極めたのかもしれない。

3部作の3作目は、何しろ難しい。
かつて様々なヒーロー映画の3作目が、微妙な出来で終わってきた。
前2作で重ねた伏線回収の困難。
原作要素の詰め込めすぎ問題。
マンネリ防止のための新要素投入の失敗。
あるいは、前2作の自己模倣作品への堕落。
などなど。
3作目は、問題が噴出しやすいのだ。

しかし今作では、これらの心配は、杞憂に終わっている。
たしかに今作にも様々な要素が詰め込まれている。
何しろ、前作で登場が明言された新キャラクター・アダム・ウォーロック(コミックの人気キャラクター)に加えて、ロケットの過去をメインで描き、さらにガーディアンズの主要キャラクター7名(コスモとクラグリンも入れれば9名!!!)に見せ場と最終回としての落とし所を用意する、というタスクは非常に重い。
上映時間150分は、短くない。
が、ポップミュージックの使い方のセンスの良さもあり、語りのテンポが良いので、体感的に長くは感じない。
さらに、脚本が練り込まれているため、必要な要素がストーリーと自然に溶け合っている。
その結果、詰め込まれた要素が破綻していない。
MCU作品の宿命で、製作期間はそこまで長くなかっただろうに、このまとまりの良さは、驚嘆に値する。

その上、語られるストーリーは、非常に感動的であり、同時に、めちゃくちゃ面白い。
ガーディアンズたちは、いつも通り、へっぽこで、バカで、暴力的だが、同時に、仲間想いで、情に厚く、そして、とても、カッコいいのだ。
アメコミっぽい決めのカットが、カッコよさを後押ししている。

これらの要素は、前2作にもあったものだが、今作で自己模倣に陥っているように見えないのは、キャラクターたちが、前に進んでいるからだろう。
ピーターは、ガモーラとの別れと再会に向き合わざるを得なくなる。
ネビュラは、サノスの娘という凄惨な過去を乗り越えて、人間性を獲得していく。
ドラックスとマンティスは、常識や身につけ…、てはいないが、たしかなキャラクターの成長を見せる。
グルートは、大きい。
そして、ロケット!!!
ああ、ロケットよ。彼こそが、今作の実質的主役であろう。
その、過去!!!

かなりヘビーでダークなストーリーを描きつつ、決して明るさを失わないことなど、ジェームズ・ガンのアメコミヒーロー映画監督・脚本家としてのバランス感覚は、卓越している。

厳密には、一部キャラクターの顛末と、一部ヴィランに関して、言いたいことがないではないが、瑣末なことだ。

総じて、非常に面白い作品だった。
少なくともフェーズ4以降の作品の中ではベストな作品の一つだろう。
そして、アメコミヒーローもの3部作全体としての完成度では、マーベルに限らず、オールタイムベスト級かもしれない。
ジェームズ・ガン恐るべし!

ガーディアンズよ!楽しい旅を、ありがとう!!

[テーマ考]
今作は、ありのままの自分であることの、素晴らしさを讃える作品である。
作中で何度も差し挟まれる、ロケットの過去のエピソードは、このテーマを苦く、そして美しく描き尽くす。
今作のメインヴィランは、まさしくこのテーマを語るべく配置されたキャラクターと言える。

ロケットに限らず、今作で語られる各キャラクターのストーリーラインは、このテーマで見返すと、とても深い。
ピーターとガモーラの顛末。
ネビュラの、改造された肉体との葛藤と、自己実現。
シリーズで繰り返しギャグとして描かれて来た、ドラックスのコミュニケーションの不全。
アダム・ウォーロックの、強力過ぎる能力。

こんな馬鹿野郎たちのありのままの姿が、こんなに愛おしく思えるとは。
これぞ、MCUが32作にもわたり築き上げて来た、キャラクターの歴史のマジックか。
あるいは、ジェームズ・ガンのセンスのなせる技か。

[まとめ]
アメコミヒーロー映画を極めたジェームズ・ガン監督による、ガーディアンズオブギャラクシー3部作の最後を飾る秀作。

こうなると、俄然、ジェームズ・ガンがリーダーを務めるDCユニバースが楽しみになってくる。
MCUが勢いを落としている現況を鑑みると、数年後には、DCユニバースが市場を席巻している、なんてことも夢物語ではないかも知れないゾ!!!