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クリード 炎の宿敵のKuutaのレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
3.8
「クリード/チャンプを継ぐ男」とのダブルフィーチャー上映に行ってきました。今年最初の劇場鑑賞。

ロッキー4の続編であると同時に、父としての自分と向き合いながらリングに立つ意味を見出す展開は、ロッキー2のリブートでもあると思った。予想外の事はほぼ起こらないし、流石に前作越えは果たしていないが、シリーズの骨格を崩さない続編としては十分な出来ではないだろうか。少なくとも、クライマックスのドルフ・ラングレンの演技だけで5億点出ている。

会話シーンのカメラワーク。心が不安定な人(セコンドを断るロッキーや入院中のアドニス)を撮る時のカメラの揺れ。会話の相手を画面内に多めに入れる息苦しさ。

戦いに負けた結果息子との絆が強くなったドラゴ親子と、エイドリアンの言う通りに大事に育て、かえって疎遠になってしまったロッキー親子の対比。ラストのロッキーの行動は、スタローンの実人生と重ねてみると、いよいよロッキーシリーズも締めくくりに近付いているのかなと感じた。

ロッキーザファイナルでの、ロッキーが壊れた電灯をつける下りが個人的にすごく好きなので、それを意識させるやり取りがあったのがニヤリとした(直った電灯は見せて欲しかった)。

折れた肋骨のせいにして棄権するのではなく、試合に勝てと鼓舞する。戦う理由・戦わない理由を、生まれ持っての境遇や負い目(聴力障害や国の違い、親を殺された過去)のせいにするな、現実に屈するなと。

クリードの名を受け継ぎ、チャンピオンになったことで感じる重圧。父の越えられなかったドラゴという壁に立ち向かう。ヴィクターが父親の写し鏡に過ぎなかったのとは対照的に(ロッキーも、鏡の中から登場する)、アドニスは自分のスタイルをロッキーと共に作り上げる。

ビアンカのキャラも少しずつ立ってきた。彼女もまた、アドニスやヴィクターがプールに沈むように周囲と隔絶された自分の領域を持ち、能動的に自分と戦ってみせる。この辺はロッキーを献身的に支えたエイドリアンとの時代感の違いか。プロポーズのやり直しはロッキー2オマージュだろう。

ドラゴ親子の話はもっと掘り下げて欲しかった。ただ、例えばスターウォーズだって(下手くそなりに)新キャラ中心の話に持っていこうとしてる訳で、アドニス夫婦よりロッキーやドラゴを見たいと感じてしまう時点で作品の停滞感が現れているのかもなあ、とも思った。

アドニスは元々アポロ的なテクニシャンだったが、今作でロッキーのような無尽蔵のスタミナ、粘り強さを身に付けたように見える。アポロの足捌きを学んで強くなったロッキーの逆を行っており、この展開はロッキー3を意識している感じ。というか試合展開も3と同じだったような…。77点。
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