たつかわ

バイスのたつかわのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.4
重要ポストの民間登用

監督の過去作「俺たち○○シリーズ」を楽しく観ていたが、前作「マネーショート」は金融用語を説明されても、金融に疎く難しすぎてよくわからなかった。本作は30歳以上の人であれば、登場人物は聞いたことがある人物ばかりで、混乱することはないだろう。サムロックウェル演じるブッシュ大統領が、クリスチャンベイル演じるチェイニーよりもひと回り小さいので、ブッシュ大統領のお面をかぶった猿のようで終始笑えた。実際はチェイニーが170cm弱、ブッシュは180cmを超える。

劇中ナレーションで説明をしている人が最後に迎える結末や、チェイニーが中盤に「体の具合が悪いので、民間会社に就職しました。」となり、エンドロールが登場する作り、釣りの意味など様々なところに仕掛けがあり、観ている人を考えさせる構造になっている。
私が特に考えさせられたのは、重要ポストの民間登用。チェイニーは政治家の経験が90年代序盤ぐらいまであったが、その後石油会社に天下りのような形で転職する。しかし、ブッシュ息子が大統領選挙に出馬する際にチェイニーを副大統領候補に指名するのだが、通常の副大統領の上回る権限を取得し、副大統領になる。政権発足直後に911テロが起こる。そこでチェイニーは法律の拡大解釈を行ったり、フセイン大統領の核の所有のでっち上げ等を行う。ここで問題なのが、チェイニーが選挙で有権者の信任を得ていれば、国民には「選んだ責任」が発生するので、我慢するなり次回の選挙で不満をぶつければ良いが、アメリカ国民にはそれができない。因みに竹中平蔵ですら、一応選挙で当選している。

前述の法律の拡大解釈は日本も憲法9条を考えさせられる。
そして選挙に勝つために娘を裏切るような行為をしてでも嘘をつく政治は怖い。

おススメです。
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