じぇれ

恋愛依存症の女のじぇれのレビュー・感想・評価

恋愛依存症の女(2018年製作の映画)
3.8
【恋愛している人が愛おしくなる人間讃歌】

恋に不器用な人を優しい目線で描いた群像劇。199分を長尺と感じさせない、可笑しさと切なさのジャブの応酬。そして迎えるラスト15分。前代未聞のから騒ぎに大爆笑。

恋の前では人間は愚かさをさらけ出し、惨めな生き物と化します。しかし、そんな姿は愛おしい。
やっぱりね、恋から逃げていてはダメなんですよねぇ。

一見したところ、ラストでは伏線を全て回収し、パズルがかちりとハマった爽快感を味わえます。
しかしですねぇ、エンドクレジットの最中にはたと気づくんです。
あれ、ピースが余りまくってるじゃないかと。
そう、無駄のない映画どころか、無駄の沢山あるいびつなラストなんです。

しかし、それは本作の欠点ではありません。むしろ、これこそが監督の狙いだと気づかされます。

「映画は省略のメディア」
序盤にこんなフレーズが出てきます。しかし、主人公格の人物すべてが成長するわけではありません。すべての恋愛模様に決着がつくわけでもありません。
つまり、ラストには機能しない部分も敢えて省略していないのが、本作の特徴なんですね。

ここに気付けば、もう監督の意図は明らか。省略が常識の映画文法では削られてしまう、無駄な部分にこそ人生があると言いたいんです。
無駄こそが人生であり、無駄こそが映画には必要であると。

エンドクレジットを眺めながら、私の人生の無駄の数々が走馬灯のごとく流れてきました。
でも、その無駄の数々が愛おしく思えてくるんですよ。

本作は、映画の常識を壊そうと試みた監督の軌跡であり、199分全てが必要な無駄で構成された奇跡なんです。

こんな長尺のインディーズ映画を撮ることには、多くの反対があったことでしょう。
それでも、意志を貫き通した木村聡志監督に目一杯の拍手を捧げます。

監督、これからもカッコ悪く精一杯生きていきます!

※どこかにチーボー(小島彩乃さん)みたいな女性いないかなぁ。もちろん独身に限る(笑)
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