akihiko810

嵐電のakihiko810のレビュー・感想・評価

嵐電(2019年製作の映画)
3.9
gyaoで視聴。キネ旬邦画ベストテン・2019年度第9位。

京都の路面電車・京福電気鉄道嵐山本線・通称「嵐電」(らんでん)を舞台に、鎌倉からきたノンフィクションライター、青森からやってきた修学旅行生と鉄オタ、太秦撮影所近くで働く女と俳優。3組の恋愛模様が交差する様子を描いている。

ノンフィクション作家の衛星(井浦新)とその妻。
太秦撮影所近くのカフェでアルバイトする嘉子(大西礼芳)と映画の撮影に来た俳優・譜雨(金井浩人)。
嵐電を撮影する事に傾倒する男子学生・子午線(石田健太)と子午線に一目惚れする修学旅行生・南天(窪瀬環)。
という3組の恋愛模様と、嵐電に乗って現れる狐と狸の車掌という「幻」が交差して話が進む。

関東人なので京都の「嵐電」は初めて知ったが、味のある鉄道でいいね。
本作は「嵐電」が舞台、というかほぼ主役で、3組の恋愛模様のいいシーンや決めセリフも、嵐電の音にかぶさったりかき消されたりして、まるで「嵐電に溶け込む」かのような演出がなされている。鉄道の音だけでなく、リアルな生活音がいきいきと収められている。

虚実が混じり込んだ作風は、「森見登美彦作品を大林宣彦が実写化した」感じを彷彿とさせる。「異界の不思議」を交錯させながら、「日常の中に光る恋愛」をうまく描いた作品だと思う。不思議な味わいがある良作。
akihiko810

akihiko810