akihiko810

BLUE GIANTのakihiko810のレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.7
石塚真一の傑作ジャズ漫画のアニメ映画化作品

「オレは世界⼀のジャズプレーヤーになる。」
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の⾼校⽣・宮本⼤(ミヤモトダイ)。
⾬の⽇も⾵の⽇も、毎⽇たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。
卒業を機にジャズのため、上京。⾼校の同級⽣・⽟⽥俊⼆(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ⼤は、ある⽇訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。
「組もう。」⼤は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する⼤のサックスに胸を打たれ、⼆⼈はバンドを組むことに。そこへ⼤の熱さに感化されドラムを始めた⽟⽥が加わり、三⼈は“JASS”を結成する。

原作は本当に傑作漫画で、「音の聴こえてくる漫画」に実際に音楽をつけて映画化するなんて、期待外れになるんじゃないのか?と、観る前は杞憂だったのだが…
それがなんと期待を通り越して、もしかしたら原作以上のド級傑作アニメ映画であった!

まずは、実際の「ジャズ」音楽の力が非常に強い。本当に宇宙の果ての高みまで連れて行ってくれるかのような演奏。ドラム素人・玉田の演奏はわざと「少し下手」に演奏していて、それがラストに向けてうまくなっていくのがわかってマジですごい。
そして演奏中の「意識をもっていかれるような」ときのアニメ表現もすごい!本当に意識がもっていかれる様を描いていたと思う。
ただ、アニメ絵には落差があって、演奏の「手元」を描くのは絶対にはずせない作品なのだが、その「手元」の絵が激しい演奏の動きに追いついてないときもままあったので残念ではあった。あと製作期間が半年以上伸ばすことが出来たら完璧だったのかもしれないが…

そして、この作品の一番の勝因は、三人の成長譚、特にドラム素人の玉田の演奏技術の成長に焦点を絞ったことだろう。メンバー3人の物語だが、玉田の色が強い。それで物語の骨子がぶれずに骨太の作品となったと思う。

本作を一番見てほしい人は、「原作を読んでない人」と「ジャズを知らない人」。「ジャズってこんなすごい音楽なのか!」と衝撃を受けてほしい。
本作は、ジャズという音楽と、登場人物たちの熱気で、本当に宇宙の果てまで連れて行ってくれるような作品だ。
こんな熱のある作品に出会えることは、一生に何度もあることじゃない。この作品の制作者すべてに感謝。
akihiko810

akihiko810