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川っぺりムコリッタのakihiko810のレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.7
「かもめ食堂」などの荻上直子監督。

築50年のハイツムコリッタで暮らし始めた孤独な青年・山田。底抜けに明るい住人たちに出会い、ささやかな幸せに包まれていく。山田(松山ケンイチ)は、北陸の小さな街で、小さな塩辛工場で働き口を見つけ、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という古い安アパートで暮らし始める。無一文に近い状態でやってきた山田のささやかな楽しみは、風呂上がりの良く冷えた牛乳。そして、お米が買える給料日を心から待ち望んでいた。ある日、隣の部屋の住人・島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと上がり込んできた日から、山田の静かな日々は一変する。できるだけ人と関わらず、ひっそりと生きたいと思っていた山田だったが、夫を亡くした大家の南(満島ひかり)、息子と二人暮らしで墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)といった、なぜだかハイツムコリッタの住人たちと関わりを持ってしまい...。

前科持ちの孤独な青年が、川辺のアパート「ムコリッタ」の住人たちと関わっていくお話。
ここは彼岸か辺獄か。「あの世とこの世の境目」みたいな川辺のアパートに住む人々。
とてもへんてこな人々。墓石のセールスマン、未亡人の大家、なれなれしい隣人。この人たちも、まるで半分ずつ「この世とあの世」にいるような人々だ。亡くなったという老婆(元住人)だって出てくる。
そんな人々の連帯をゆるやかに描いた作品。
ユーモアやペーソスが散りばめられているが、なんというかとてもゆるやかな感じなので、「ツボにはまった!」というほどの傑作コメディまでには至らずといったところ。
ただ「ゆるやかヘンテコ」な雰囲気で、持たざる者・孤独な者たちの連帯が描かれ、とそこまでは近年のコンテンツにはよくあるのだが、本作が特異なのは、(登場人物の、ではなく「作り手の」)「死生観」が語られる作品であるということ。まあ、へんてこな作品といっても差支えはないだろう。
傑作には至らないが、良作程度にはなっているとは思う。
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