FutosiSaito

この道のFutosiSaitoのレビュー・感想・評価

この道(2018年製作の映画)
3.4
 「文部省推薦映画」小学校の視聴覚室で見たような、「文部科学省」というダサい名前でなく「文部省」時代に推薦された劇映画のようだった。
 童謡の誕生と、その生みの親である二人の物語。
 だんだんと父親、麿赤兒に似てきた大森南朋の独壇場で、「女たらし」で憎めない北原白秋を、期待通りの演技で見せる。
 制作会社「LDH」のメンバーでもあるAKIRAは山田耕筰を演じるが、ポイントを抑える程度の出番にしている。
 ソフィこと俊子を演じる人妻がエロいという評判もあるが、特筆すべき女優は、羽田美智子であろう。
 与謝野晶子を堂々と演じて、かつ落ち着いた大人の雰囲気も漂わせている。さすがだ。
 また、この映画の元になったのは「瀬戸内晴美」時代の瀬戸内寂聴原作の『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』という1984年刊の小説であったことも面白い。
 映画では触れられていない、二人目の妻について詳細に描いた作品だ。
 その妻、江口章子は座敷牢でひっそりと亡くなった。Wikipediaにも書いていないこの事実に注目した瀬戸内晴美は、やはり情念の人だったのだ。
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