空海花

ライトハウスの空海花のレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.0
魔女ホラー『ウィッチ』(未レビュー)のロバート・エガース監督の長編2作目
製作A24。
カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞受賞。
アカデミー賞撮影賞ノミネート。
『ウィッチ』の世界観も合っていたので、かなり楽しみにしていた作品。

1890年代、ニューイングランドの孤島に
2人の灯台守がやってくる。
ウィレム・デフォー×ロバート・パティンソン
ベテランの年輩者と未経験の若者。
彼らはそりが合わず初日から衝突を繰り返す。
やがて嵐が来て、彼らは外界から隔絶される…

モノクロと「1.19:1」のアスペクト比で映し出される純粋な狂気の映像美。
荒ぶる波、2俳優の眼力が強烈。
監視船が来る前夜、酒を断り続けた若者は気を許し、酒を酌み交わす。
2人は泥酔し続け、狂気と幻想に侵されていく。

デフォーが語る言葉たち
人魚の幻、海鳥の呪い、セントエルモの炎…
それらはパティンソンの夢や幻想に顕れる。

ギリシャ神話、映画や書物、芸術作品からの着想やオマージュ。
何かこういう感じ見たことある、というのも僅かにあったけれど、劇中で思いつくのは残念ながら至難だった。
台詞は詩的でありつつ、戯曲のようでもある。
デフォーのデフォルメ(洒落ではない笑)は
つまりはパティンソンの幻想。
彼はここに来る前から人格が乖離している理由がある。
ピークに達した時のパティンソンの怪演は稀に見る凄まじさ。

蛸のような足は神話の海獣のようでもあり、ラヴクラフトの大いなる存在を思い出さないこともない。
禍々しく、吐き気がするほど気持ち悪い。
ジャン・コクトーが阿片で幻想を見続け
絵に表したように。
人の悪夢と闇はどこまでも深い。

監督は台詞の間をすごくこだわるらしいので、あの名前の呼び方は意図的だ。

映像の質、色、サイズ、音楽、アイテムなどは徹底した懐古主義。
様々な要素から来る着想は意味ではなく
美意識とその偶然性ではないか。
霧笛の響きに掻き乱され
灯火に照らされて、狂気と悪寒が駆け抜けていく。

「The Light-House」はエドガー・アラン・ポーの最後の作品の非公式タイトル。
1801年にウェールズの灯台で起こった灯台守の実話がストーリーの基になっているとのこと。

撮影もとにかく大変そうで
パティンソンは泥酔シーンで本当に気を失ったとか。
出演者とスタッフに心からお疲れ様と言いたい。。


2021レビュー#132
2021鑑賞No.286/劇場鑑賞#37


これを観た夜は、眼に耳に灼きついて眠れませんでした(笑)
空海花

空海花