おぞましく、禍々(まがまが)しい、でも美しくもある寓話。
プロメテウスの引用どおり、神話でもある。そして、神話には暴力や裏切り、嫉妬など「ヒト」のネガティブで醜いところも登場する。
冒頭の音楽や効果音からして不吉で、不穏な匂いを醸し出している。孤島かつ灯台という閉鎖空間も辛い。
さらに、血液を含んだ体液や排泄物も登場する。カラーでは生々しすぎて、モノクロにしないと表現できなかったのだろうか。そのくらい酷い(ほめ言葉)。
主役二人の演技合戦も、灯台における主導権の取り合い同様に熾烈で見ごたえがあった。特にロバート・パティンソン、『トワイライト』や『テネット』のハンサムからは想像もできないほどの汚れ役で狂気もあり、その落差に驚いた。
そして神話と人間の本質というか普遍性。
人魚のイメージ含め、不思議な怖さと美しさの同居する、印象に残るどころか忘れられない映画体験になった。
こんなどぎつい企画にカネを出す「A24」って、やはり偉い。