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イタリアの父のmayaのレビュー・感想・評価

イタリアの父(2017年製作の映画)
4.6
本作、思いがけず私の中でものすごく大切な映画のひとつになった。
結婚、家族、子供についてある種の拒絶反応を示す人、あるいは逆に異常な執着を示す人にとって、問題を解きほぐし、新しく本質的な一歩を踏み出させてくれる作品。

動物的な自然としての「出産」と、社会的な制度としての「結婚」を下敷きにした「家族」に、愛が芽生えて幸せが訪れる方が不自然なのでは?という違和感を、繊細にふたりの人間の心の触れ合いを描くことで浮き彫りにしていく。家族や出産を否定するのではなく、そこに愛が生まれるのは何故なのかを、丁寧に描き出している。パオロがゲイセクシュアルである設定は本当に重要だと思う。愛や絆がある関係が、性愛に突然あっさり負けてしまうことにとても違和感を感じていたので、ミアがクラブでイケメンをひっかけた後、パオロのところに戻ってきて寄り添うシーンに「愛にはまだ力があるはず」と思い直すことができた。

規範に苦しむパオロの「無理をすることは自然に反する」に対する、「自然は毎日奇跡を起こす、この私も、奇跡のひとつ」というアンサー、完璧すぎる。人間ひとり、その存在こそ奇跡だという、根本からの反自然性にハッとさせられる。

パオロが赤ちゃんの手を握り「お前は小さな奇跡、そして奇跡とは自然に反するものだ」と独白するシーン、こんなにも、親の愛そのものを描いているシーンを他に知らない。愛はまさしく、自然にも、制度にも反する奇跡であり、そこに「家族」のかけがえのなさがあるのだろう。
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