ぐるぐるシュルツ

シシリアン・ゴースト・ストーリーのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

3.6
夢で想っていて。
私も夢で想っている。
そうすれば、
どこかできっと巡り逢えてる。

〜〜〜

誘拐された少年と、
彼に想いを寄せていた少女が紡ぐ一つの物語。

とにかく風景が圧巻です。
乗馬場や湖、草原。
シチリアの自然の雄大さに圧倒されます。その神々しさが今作の「物語性」を更に高めているようでもあります。
晴れの日も霧の日も。
水も光も、その音も。

そして主人公ルナは
それらの自然と呼応するように
心がざわめき、ゆらぎ、ときに澄まされていく。
決して届かぬジュゼッペへの気持ちが、
物語となって紡がれていく。

軟禁されたジュゼッペ側の描写は、
その全部がルナが作り出した夢の物語である気がします。
それ故に、彼女の心理状況にぴったり合うようにして、ジュゼッペの気持ちも動きます。
ルナの想いや願いが、そのまま物語の中のジュゼッペの亡霊を動かしていくのです。

でも、彼は戻ってこない。
だからルナが想像できるのは、
自分を夢見るジュゼッペのことだけ。
この、届かぬ想いが生み出した
「相思相愛」が切なくて、
でもその中でも奇跡のように巡り逢えたとき、二人だけの美しい瞬間が訪れる。


なんだ夢かよ、というのは容易い。
でも、まぎれもなくこの作品自体が、
実際に起きた事件から、
ジュゼッペ少年の抱えた悲しみや痛みを
夢で想いながら作り出した物語に違いない。

この映画を通して、
また僕ら一人一人が
夢想して物語を紡いでいく。
この作品はあくまで、
その無数の中の一つの物語にすぎないのです。

ちなみに、
ルナ = Luna = 月
フクロウ = 夜の目

暗い夜を越える「夢」を象徴しているようでもあります。

僕らもきっと夢で逢えたら。