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騙し絵の牙のhikarouchのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.4
全然悪くないけど、サスペンスというかサプライズ要素にサプライズが足りないというか。偽物が出てくることで本物が名乗り出てくるって話どっかで見たと思うんだけど何だっけか。

良かったところは、とても映画っぽいカメラアングル、ギターリフの劇伴、Amazonとかフライデーとか実名でちゃんと出すところ、豪華俳優陣による華やかな画面。あと斎藤工の最初のシーンでのスーツの生地、プロット上での情報のばらまき方。
劇伴は、LITEというインストのロックバンドだそう。

イマイチだったのはセリフかな。カッコつけててカッコ悪いタイプの。原作小説からそのまま取ってきたのかは知らんけど、書き物をそのまま口に出すと寒くなるというよくあるパターン。

ひとつハッキリ嫌いだったくだりがあった。
大泉洋が國村隼のビンテージワインを安物とすり替えて「やっぱ味なんて分かってねーじゃん」みたいにしてドヤ顔するくだり。
いやいや、ワインでも何でもそうだけどさ、ものの価値には文脈ってもんがあるのよ。どういう土地のどういう畑で、どういう制作者が作った、どういう年の、どの品種のぶどうのワインなのかっていう様々な文脈を込めて味わうわけよ。ワインに限らず、世の中の価値あるものってのはなんでもそうなのよ。映画もそう。スポーツもそう。
WBC決勝の日本対アメリカは、史上最高に「試合単体でレベルの高い野球」だったからみんなが感動したの?違うでしょう。それがWBCの決勝であり、前日に準決勝の死闘があり、日本にとって14年越しの雪辱戦であり、大谷がいてトラウトがいて、だからこそ最高だったんでしょう。文脈なんですよ。
映画を作るひとがそういうところに目を向けずに、価値あるものを楽しもうとする人を馬鹿にするような姿勢は、とても嫌いでしたわ。
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