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騙し絵の牙のこたつムービーのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
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こういう映画かあ。なるほど。
ドラマっぽさが気にはなった。とくに音楽がちとダサくその入れ方もまさにドラマっぽい。キャスティングに意外性はさほどなく、吉田大八のシャープさも影を潜めていると想う。

しかしこの作品にノーとは言えん。

街の本屋がひっそりとなくなる様を私たちは目撃している最中なのだから。そして出版業界の話だが、そのリアリティの「射程」は現代のあらゆる分野を映しているから。


「世界かあ。日本の中じゃダメですか」


この、終盤のスタッフ(それもまだ若い)の台詞がリアルで、一方で、大泉洋のようなノスタルジーガン無視のギンギンな仕掛け屋も、佐藤浩一のようなギンギンな解体逃げ切り屋も、斎藤工のようなファンド野郎も居る。まさに今の日本そのもの。伊庭家御曹司(中村倫也)の帰還でハッピーエンドとはならず、その後の経営で数字を詰められる(つまり日常がまた始まる)サマもくそリアルで、噛みごたえがある。

(一つツッコミメモを加えると、Amazon取付でも即ち「世界」とはならない。なぜなら書籍とは言語を扱うメディアだから。日本語は日本なんだよな。だがとにかく今という想念を伝える経済映画よ)


最後の展開はファンタジー濃いめだが、それもスペシャルな武器(リリー)あっての行動だしなあ。ほんと待ったなしの時代感を地味に、ソフトに、見せつけようとしている作品。

冒頭「ドラマっぽい」とは言ったがこの具合は民放ドラマじゃより一層腰の引けた描写になることも容易に想像がつく。映画でよかったのかもね。比較的に短尺なのもよい。

話には関係ないが、松岡茉優は肌弱そう。