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翔んで埼玉のKuutaのレビュー・感想・評価

翔んで埼玉(2018年製作の映画)
3.0
満席だった。終幕後の劇場の空気がとても暖かった。

良かった所。
終始真面目にふざけている。シラコバトの目をどんどんアップにするプレッシャーのかけ方(スコセッシの「沈黙」パロディ)。ディストピア感のある池袋(西武と東武とパルコがあれば、そこは池袋なんだという力強いメッセージ)。流山での、トラックの荷台パカパカや、YOSHIKIドーンから舞い上がるたかみーの大凧(春日部名物)にあふれる祭り感。カードバトルってストレートに言ってしまう衒いのなさがとても良い。

めちゃくちゃな設定、見た目の伝説パートだけを2時間続けられると見てる方も辛くなっただろうが、NACK5を使った再現というアイデアで現実パートを適度に挟んだのは、絵的にも見る側の気持ち的にも箸休めになっていて良かったと思う。

高校生のボーイズラブものなのにGACKTと二階堂ふみという配役。めちゃくちゃだが、こちらもちゃんとハマっていた。

良くなかった所。
内容のわりに長い。残念ながら地域ディス以上の面白さはほとんどないので、90分くらいならもう少し楽しめたと思う。特に序盤の学園パートや中盤には停滞感が否めない。

要はこの話は①埼玉県民が誇りを取り戻す② 百美(二階堂ふみ)が東京至上主義から抜け出して多様性を学ぶ、この2点が肝といえる。このうち、①は合戦前夜の会合シーン等である程度描けている一方、②がかなり雑だった印象。

麗(GACKT)を追いかけて東京の外に出るという百美の動機付け自体は自然だが、そこから各地の地域性を学んでいく部分が物足りなかった。トンネルの話と、夜空を見て麗と会話するシーンくらいか。百美が理解したのが麗への愛なのか、地域への愛なのかが曖昧なまま東京に連れ戻されてしまうので、後半の百美パートは、感情の置き場に困ってしまった。わざわざ話を分けたわりに面白くない。

最初に映画内で示していたように常磐線経由で各地の風土に触れながら埼玉を目指す百美と麗のロードムービーにして、到着後千葉との合戦開始→百美は群馬へという流れの方がシンプルだったのでは。

また、京本政樹の父親云々の展開がうまく機能していなかった印象。見てる側からすると麗が埼玉の革命家なことは最初から分かっているため、本当の父親が「まぁまぁ偉い革命家」ではなく「凄く偉い革命家」だったという展開のツイストは、麗の決意を固くする描写として、そこまで効果的とは思えなかった。

終盤の構成。
東京人が埼玉と千葉の架け橋になる展開はなるほどと思わされたし、グンマーの件もしっかり回収。クライマックスへの流れはちゃんと考えてある。それだけに、千葉と共闘を決め、都庁に走り出す場面は当然一番燃えるシーンのはずなのに、一旦飛ばして後ろにまわす構成を取っている。イマイチ理解できなかった。トンネルでの戦いはせっかくの盛り上がり所なのに、「何でこういう事に」という疑問が頭を離れず、すっきり乗れなかった。60点。
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