りっく

バーニング 劇場版のりっくのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.5
韓国の貧富の格差を背景にした、神隠しであり、神殺しの映画であり、どこか神の存在を意識させる傑作。

まず、農村出身の青年が幼馴染の幻影を追い続ける片想いのラブストーリーとしてあまりにも切なすぎる。整形、パントマイム、姿を見せない猫、誰も覚えていない思い出、見つからない井戸や燃えたビニールハウスなど、実態のない不確かさを散りばめつつ、実質ヒロインとして自由奔放で無防備で危うい強烈な印象で見るものの心を鷲掴みにし、それでいてまるで夕闇に溶けてしまったように裸体でダンスをする神々しい姿が素晴らしい。

また、こちらも得体の知れない、あまりにも生活感が希薄な金持ち青年を演じたスティーブユァンも見事。全知全能の神のような存在でありながらも人当たりも良いという隙のない不気味さを纏い、一方で彼に勝るものがひとつもない主人公の惨めさが、同一画面に映るたびに強調され痛々しい。

そんな失踪した女を巡る2人の男を通してイチャンドンが描いてみせた悲劇は、もはやこの分断された世界を修復するのは不可能なのではと最終通告を通達されたような絶望感が漂う。
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