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毒戦 BELIEVERのblacknessfallのレビュー・感想・評価

毒戦 BELIEVER(2017年製作の映画)
3.3
香港の名匠ジョニー・トー監督作の韓国版リメイク。
ジョニー・トー大好きっ子の自分としては幾分ツラいもんがあった。

ジョニー・トー版は吊り橋効果の持続とスピーディーな場面展開でドライブ感とスリルを紡いでいくハイスパートサスペンスノワールだったんだけど、それが韓流特有のヘヴィなドラマや過剰なバイオレンス、ベタなまでに感情に訴えてるくるエモーショナルな演出に呑み込まれてしまいけっこう普通の韓流ノワールに染め上げられてしまった印象。

麻薬組織を摘発したい刑事が麻薬組織のメンバーをスパイに仕立て潜入捜査するアウトラインは一緒なんだけど、ジョニー・トー版では利己主義の塊で口は回るがいつ裏切るか分からない信用できないねずみ男のような詐欺師気質だったスパイが、誠実そうだがどこか掴みどころのないミステリアスで繊細な男に改変されてしまい、トー版のおもしろさであった信頼と不信が交互にくる楽しさと、バディものなのに一向に信頼が生まれないまま捜査に突き進むハラハラドキドキが薄くなってしまってた。これは非常に違和感があったし残念だった。
トー版のスパイは自分が助かりたい一心で状況によって警察に嘘をついたり組織を騙そうとしたり、その自分本意に四苦八苦するとこが惨めで滑稽でおもしろかったけど、こっちは違うんだよな。やることは同じなんだけど、その背景があまりに過酷で同情できるものであり、その真意を知った時に彼に同情せずにはいられない悲しいものなんだよ。
そういうシリアスさは求めてないよ、、

それと麻薬組織の幹部達のイカれ具合やそこからくるエグいバイオレンスを増して警察だとバレたらヤバいと思わせる緊張感は前作を上回っていた。
ただ、ここもキャラ立てに重点が置かれ過ぎてスピードが削がれドライブ感が薄くて乗れなかった、、笑

このエグいバイオレンスに凄絶な苦渋に満ちた重厚な人間ドラマ、ひりつくような哀切、パク・チャヌクの復讐三部作に近いと思った。

復讐三部作、特に"復讐者に憐れみを"は好きだけど、そういうの求めてたわけじゃないからな笑
ゾワゾワしたり打ちのめされたいんじゃなくてハラハラしたかったんだよ笑
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