じぇれ

ブラック・クランズマンのじぇれのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.5
【フィクションの力を信じてほしい】

新人警官ロンはKKKとの接触に見事に成功。しかし、黒人であるロンが直接会うのは不可能で、ユダヤ人の先輩警官に”ロン”役を依頼。こうして前代未聞の二人三脚での潜入捜査が始まった!

1978~79年の実話を基に、あのブラックムービーの大御所スパイク・リーが再構成。
ブラックユーモアを交えながらサスペンスを構築していく語り口は見事で、笑って考えさせられる1作に仕上がっています。

中でも非常に上手いのが、冒頭に登場する白人至上主義者のキャスティング。彼に演じさせることで、この物語が40年前の過去のことではなく、現在進行形の忌むべき事態だと強烈に印象づけてきます。

また、初めて署を訪れる主人公に署長が話す内容も示唆的。黒人初のメジャーリーガーにして多くの白人たちにも尊敬された、あのジャッキー・ロビンソンを引き合いに出すんです。これによって、本作が人種差別への単純な怒りではなく、主人公ロンの成長物語として方向づけられます。

実際ロンは、ジャッキー・ロビンソンのような存在に成長する兆しを見せ、ささやかながら光が射してきます。

だからこそ、惜しむらくはラスト。スパイク・リーのメッセージはしっかりと物語という形で昇華されているのに、自らそれを壊してしまうんです。それによって衝撃を受ける観客も多く存在するのでしょうが、私の場合は興醒めしてしまいました。
(これは完全に好みの問題なんですが)

実録ものとはいえこれは、脚本家が物語を作り、監督が指示を出し、俳優が演じるフィクション。ならば、フィクションの力を最後まで信じきってほしかった! ドキュメンタリーにしか伝えられないことがあるように、フィクションにしか伝えられないことも沢山あるはずなのですから。

というわけで、ラスト数分で大幅に減点し、この点数にしました。本当は4.0をつける予定だったんですけどね。
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