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ドッグマンのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ドッグマン(2018年製作の映画)
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マルチェロとシモーネは見た目からしてチワワとピットブル。そして身体つきも気性も弱々しいマルチェロは、屈強で獰猛なシモーネのイヌだ。コカインを餌に何とかなだめすかし機嫌を取りながら、「友達」と呼ぶ飼い主に首輪をはめられ決して逆らえない。但し、それは狭いコミュニティの人間関係でも同じこと。ご近所仲間と興じるフットサル場は、ドッグランに重なる。刑務所の檻は犬たちを預かる檻。彼らはいつでも他の犬と縄張りを争い、最も小さな犬にしわ寄せがくるのだ。
舞台となる寂れた海辺のロケーション、マジックアワーの撮影がとても印象的だった。ちょっとアントニオーニやテレンス・マリック風に、息苦しい檻の中の閉塞感とストレス、荒涼とした生活を映し出している。マルチェロの営む小さなドッグサロン「ドッグマン」と軒を連ねる店、強面のおっさんらがランチという密談をするテーブル、浜辺には薄汚れて朽ちた遊具、犯罪と暴力、それ以外何もない。こんな所でドッグサロンというのも違和感あるが、海で休日を過ごす観光客向けなんだろうか。マルチェロと幼い娘もどこか美しい海でのバカンスを夢見ながら、ダイビングを楽しむ。海の中では命令したり邪魔する者もいない。
だが小さな犬が猛犬に噛みつき閉じ込め、首輪をはめ、外へ出て吠えたとて、やはり景色は変わらない。マルチェロの顔を捉えた長い長いワンカットのエンディングに、アントニオーニ的不条理&不毛なイタリア映画らしさを感じる。何と殺伐した風景よ。
しかし犬のデカさにもおののいたけど、冷凍チワワは衝撃すぎた…。これも犬好きにはお勧めできない犬映画。
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