KnightsofOdessa

マルセイユのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

マルセイユ(2004年製作の映画)
4.0
[マルセイユで狐につままれて] 80点

いつも通り揮発性の高いシャーネレク作品。若い写真家ソフィーは、ドイツにある自分のアパートをマルセイユの女学生と交換し、10日間の休暇をそこで過ごすことにした。知り合いは誰もいないので、一人黙々と写真を撮り、バスに揺られ、その日の成果を壁に貼って寝るという生活を続けていたが、偶然車を貸してもらった縁で整備屋のピエールに出会い、マルセイユでの生活は忘れがたいものへと変化していく。という話かと思ったらいつの間にかベルリンに帰ってしまい、ソフィーの友人ハンナが登場したり、ハンナの出演する舞台劇の練習が挿入されたり、ハンナとソフィーが喧嘩を始めたりと掴みどころのない話が展開される。断片的なエピソードから人間を多面的に捕捉していくのは最新作『I Was at Home, But...』にも通ずる部分があり、掴みどころのなさはその他ベルリン・スクール出身者(主にクリスティアン・ペッツォルトとウルリヒ・ケーラー)の作品にも通ずる部分がある。掴みどころがなさすぎて、三回目の鑑賞なのに毎回新鮮な気持ちで全編観られるのはシャーネレクファンとしてありがたい。

バーの場面でめちゃくちゃ被写体深度浅いのが気になった。周りがボヤケて気になるくらいなのは初めて。マルセイユの女学生が貸すアパートが完全に人の気配の全くしないもので、彼女はソフィーのアパートにも来ていないという最強ホラー要素が5秒で回収されるのが一番怖い。
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