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孤狼の血 LEVEL2のHrtのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.4
スクリーンから匂い立ってきそうなほど実録感に満ち溢れた前作に引き続き東映映画のそれを踏襲はしているものの、よりエンターテイメントなアクション映画といった出立の『孤狼の血 LEVEL2』である。
大上の後継として裏社会の均衡を保つ役割を担う日岡だが、冒頭から終始甘さが目立つ方法で仕切ろうとしているのが危なっかしい。
彼は「生かさず殺さず」のバランスで躊躇なく裏社会に出入りしていた大上とは違う。
本物の孤狼だった大上ワナビーの野犬といったところが関の山だろう。
本編でも自分で自分のことをそう呼ぶ台詞が出てくる。
相対す上林は出所してくるやいなや日岡が築いた淡い均衡を次々とぶち壊していく。
2人の間にある障害を全て取っ払った先のクライマックスの激闘。
上林の文字通り命懸けの暴力に日岡の3発。
憎み合う中でも互いを特別と認め合った者同士が打つ終止符に痺れた。
絶滅したはずの狼を左遷先の交番近隣の山で探し求める日岡の姿になお牙を抜かれていない様子がうかがえる。

鈴木亮平を久々に認識した作品だった。
彼の瞳孔の鋭さに上林という人物の出自を確認できる。
彼(とチンタ)を在日コリアン(?)という設定にした白石監督の戦後日本社会への視線は流石としか言いようがなく、『仁義なき戦い』のような昭和後期の広島に育った環境の劣悪さが再び現代に甦る。
亡き五十子会長への義理のみで凶行を繰り返す上林の反社会、アナーキーぶりは全編に渡るが、それを生み出したのもまた社会なのだということ。
こうした事物を暴力団を使うことによって描きエンターテインすることに犯罪映画の面白さを再確認した。
社会と犯罪は切っても切れない。
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