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真実のNEWおっさんのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
3.5
「大女優のプライドと寂しさ」

「万引き家族」でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の最新作はフランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーブを迎え、初の国際共同製作で手がけた長編作品。嘘だらけの母の自伝の出版をきっかけに微妙に距離が開いていた母娘の真実が浮き彫りになっていく。

カトリーヌ・ドヌーブの映画は「8人の女たち」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ぐらいしか見たことが無く、どちらも勝気でそういう役が多いイメージなんだが、この映画の主役であるファビエンヌもそうだった。女優であるが為に友人すら踏み台にし、いつでもトップじゃないと気が済まないプライドの塊。それでいて自分の身を脅かしそうな女優が現れると意地悪したり逃げたりする。しかし時折垣間見える寂しさに人間らしさを覚える。

娘はそんな母親と何回も衝突しながらも最終的にはスッと胸を撫で下ろす展開にしてるの正に是枝監督っぽい。舞台を海外に移しても、自分のイズムは作品に引き継がれつつ、フランス色も薄まってない撮り方は最早職人な粋だな。

劇中で何度も名前を聞くサラについて言葉のみで語られるのは気になった。過去のシーンを極力取り入れない監督らしいが、母と娘の関係に纏わるキーパーソンな人物なので、そこはちょっとでも描写すべきじゃないだろうか。