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ビューティフル・ボーイのikumuraのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.9
かなーり重たい映画なのに中間選挙の夜の映画館はほぼ満員。4ドルでポップコーンも付いてくる火曜日の上映だからか。それともティモシーシャラメ効果?

ティモシーシャラメのナルシスティックでデカダンな感じが苦手だったのだが、この映画での、笑顔の奥に虚無感を感じさせるような、恐ろしいほど美しい瞳もあってまさにハマり役(今までの役もハマり役だったんだろうが)。

何度抜け出そうとしても手を出してしまう薬物中毒の恐ろしさ。幼い頃に両親が離婚して、それでも父もその再婚相手と温かい家庭を築き、異母弟妹も可愛く、本人にも才能があって、でも何か埋められない寂しさを、家族の優しさを理解しているゆえに内に溜め込み破滅していく・・・とも読めるけど、一番言いたいのはおそらく、社会問題としてどんな境遇にあっても陥りかねないほど深刻だということ、いまも奪われ続けている命の一つ一つにユニークな人生あってその周りに傷つけられた家族や友人がいるということで、「弱い人間だから薬なんかに手を出すんだ」という話ではない。(主人公の「生」がどうなるかはネタバレなので言わず。)

治療を試みる過程の中で、父親、義母、実母、それぞれが自分や息子、家族との向き合い方を見つめ直していく、という筋もあるのだが、いずれにせよすべて一直線ではなく、ゆっくりと展開していくのが逆にリアルで、痛々しいけど感動的であった。

オハイオは薬物問題の一番深刻な地域の一つだけに、やはり選挙の夜に見るのにふさわしかったのかもしれない。
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