荒野の狼

将軍家光の乱心 激突の荒野の狼のレビュー・感想・評価

将軍家光の乱心 激突(1989年製作の映画)
4.0
本作のロケ地の一つの京都嵯峨野の大覚寺に訪れる機会があったので鑑賞。大覚寺は、映画の前半で堀田正盛(丹波哲郎)の屋敷の門として大覚寺の「表門」「明智門」付近が使われていたが、実際に大覚寺を訪れると観光のポイントにはなっていないので注意したい。他に印象的なロケ地は渓谷のシーンだが、これは石川県白山市の弘法池近辺にある手取渓谷。本作は1989年公開の111分の作品で登場人物などは徳川家光の実在の人物が多いので、本作の内容はフィクションが多いが史実との違いなども楽しめる作品だが、魅力はアクション。
主役の緒形拳と千葉真一の一対一の対決は1981年の映画「魔界転生」では緒方が悪の宮本武蔵で千葉が善の柳生十兵衛であったが、今回は緒方が善玉。緒方はえんじ色の鉢巻きを本作ではしているが、これが武蔵を連想させるところはある。今回の対決では、屋根の上での対決などが多く、これらのシーンでは緒方の役はスタントが使われているようである。二人の対決には、こうした舞台設定などの小細工なしに、じっくりと見たかった思いは残る。
千葉は本作では悪役であるが、善玉よりも似合っているのではと思える演技。大物同士の対決は、他に千葉の剣と丹波の槍の対決が短いながらもある。松方弘樹(阿部重次役)と京本政樹(家光役)はアクションがないのは、少しもったいない。
他には、本作の最大の見どころと言ってもよいのが、長門裕之が終盤に乗馬しながら全身に火をつけて猛進するシーン。三国志演義「赤壁の闘い」の黄蓋を思わせ、鬼神のような迫力である。セリフを喋らない気が優しい中国武術の達人は「少林寺」などの出演もあるフー・チェン・チャン(胡堅強、Hu Jian Qian、Jianqiang Hu)が演じている。チャンは酔拳、棒術から三節棍まで繰り出したアクション。千葉との一対一の対決がなかったのは残念。
なお、本作では残酷なシーンも、いくつかあるが、短いので許容範囲ではある。馬の転倒や転落シーンが多いが、馬にケガのないように入念なリハーサルと準備をおこなって撮影されたとのことである。
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