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ドクター・スリープのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

オーバールック・ホテルで死んだジャック・トランスの息子ダン・トランスの後日譚。彼は父親と同じようなアル中となって世間から身を潜め暮らしていた。ある日、自分と同じような強い「シャイニング」を持つ少女アブラとテレパシーで通じ合う。数年後、少年少女から「生気」("steam")を吸い何千年も生きる魔物たちに狙われるようになった彼女を救うためにダンは奔走する。

原作未読なので、「ああ、やっぱりダンはトラウマに怯え身を持ち崩したんだな…」と思い悲しかった。しかし物語全体がダンのセラピーのように機能している。AA(アルコホリクス・アノニマス)に参加して、オーバールック・ホテル内で父の幻影に酒を勧められても断れるほどに回復する。原作にはダンのシャイニングを鈍らせていたのは酒だったという記述があるのだろうか。

『シャイニング』が雪に閉ざされたホテル内だけで展開するのに対し、この作品はアメリカ中を縦横無尽に駆け巡る。彼の国の広大さを示すように直線的な道路のショットが続く。

最初の展開はダルく、野球少年が惨殺される場面では「怖いのと残虐なのとは違うんだよなあ…」と思って観ていた。しかしアブラとダンが協力して魔物たちを追う「転」の部分になると俄然面白くなる。やはり「痛いのが分かっている残酷描写よりも、次に何が起こるか分からない」サスペンスこそ、私の中では恐怖を引き起こすのだと感じた。

「化け物には化け物をぶつけんだよ」(©️『貞子vs伽耶子』)とばかりに決戦の場にオーバールック・ホテルが選ばれる終盤にはワクワクした。

オーバールック・ホテルのシェフがダンの守護者となったように、これからはダンがアブラの守護者となるのだろう。敵も複数だが味方も複数いるというのが、長大な作品を何作もものにし、各作品間でクロスオーバーをさせているスティーブン・キングらしい世界観である。
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