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ドクター・スリープのyoshi44のネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

かの『シャイニング』は原作と映画とでかなり趣きの異なる作品で、それはまさしく原作者スティーヴン・キングと監督スタンリー・キューブリックの作家性の違いである。キューブリックによる映画版は、原作者キングからの散々な酷評をくらいつつも、ホラー映画の金字塔として語り継がれるほどの名作となっている。
このジレンマが本作の映画版『ドクター・スリープ』の特殊さ、見事さの根幹になっていることは言うまでもなく。
以下ネタバレあり。
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原作と映画版『シャイニング』の大きな違いはまずエンディング。原作ではあの呪われたホテルは焼け落ちるが、映画版では氷に閉ざされてそこに残る。
加えて作品全体を取り巻く超常的な描写と人間関係の掘り下げが(当然ながらそれがキングによる真骨頂なので)明確な原作に対し、極力ディテールを排除して余白を残すキューブリックの手法がこの両者を大きく隔てている。
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で、本作。
当然ながら原作『ドクター・スリープ』ではホテルは焼け落ちているので登場しないが、映画版はあくまでキューブリック版『シャイニング』の続編なのでホテルは登場するのである。
にも関わらず、映画版『ドクター・スリープ』はキングへのリスペクトもあるのだろう、キューブリック版にはなかった超常的な描写がこれでもか、と繰り広げられる。
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ということで、自分のようなキングファンとしては「待ってました!」の面白さ、逆にキューブリックによる映画版『シャイニング』しか知らない人は「なんじゃこりゃ?」な作品になるのかと。
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クライマックスに向けてキングとキューブリック、どちらにもできなかった展開をやってのけたマイク・フラナガン監督の手腕は称賛に値する。
最悪の強敵が味方(?)になる胸熱展開は少年漫画のそれのようで、悪よりも正義の力の方がケタ違いに強い点にも最高のカタルシス。
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