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ドクター・スリープのBellのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.0
スティーヴン・キング原作のホラー小説の映画化『シャイニング』の続編の物語、『ドクター・スリープ』。
『シャイニング』の、あの惨劇を経験した少年ダニーの、40年後を描いた作品です。


40年前、雪山のホテルで父親に殺されかけたことがトラウマとなり、また、自身の特殊な能力「シャイニング」にも苦しめられ続けてきた主人公のダニー。

彼は、父親と同じアルコール中毒になり、他人からも、自分自身からも逃げ続けて孤独に生きていました。

そんな時、彼は、自分と同じ能力を持つ少女と、不思議な意識の交信によって知り合います。

その少女は、その能力により、子供ばかりを狙った連続殺人事件の現場と犯人を目撃してしまった・・・とダニーに伝えるのでした。

そんな彼女に、犯人グループの魔の手が迫りつつあり、危険を察知したダニーは、少女と共に、子供の命を奪う謎の集団に立ち向かう事となります。

そして、邪悪な力を持つ敵に勝つための作戦として、ダニーは、40年前に彼の父親が起こした惨劇以来、廃墟と化していたオーバールックホテルへと向かうのでした。

※ ※ ※ ※ ※

映画『シャイニング』が泣きたくなるほど怖かったので、今回の『ドクター・スリープ』もドキドキ緊張しながら鑑賞しました。

てか、予告編のイメージでは、例のあの怖いホテルで、亡霊vs特殊能力保持者達のバトルロワイヤル・・・って感じじゃなかったですか??

予告編めっちゃ怖そうでしたものね。

でも、意外にも、そんなに怖くなかったかな。

あのホテルでのシーンも、後半戦からでしたし。

寧ろ、とても良い話で感動しましたです。

前作の『シャイニング』が原作小説と異なって、完全にホラーに特化した作りであったのに対し、この『ドクター・スリープ』は、ホラーでありながらも、人間ドラマに重きを置いた感動のストーリーになっていたと思います。

『シャイニング』に比べて、原作よりなのかな?

なので、怖いシーンがありつつも、幼少期のトラウマやシャイニングの力の所為で苦しみ、自暴自棄気味に生きていたダニーが、己と向き合い、トラウマを乗り越え、そして、人を守るためにその「力」を使うようになっていく、人と人との絆を結んでいく・・・という成長の過程にグッと引き込まれました。

とはいえ、『シャイニング』を彷彿とさせるような映像の作りは、いろいろとありました。

不気味な不安感を煽るシンメトリーな画面だったり、鏡が重要な役割を果たしているところは、『シャイニング』と同じだなぁと。

そして、後半。

舞台は、かつての惨劇の場・オーバールックホテルへ移ります。

あのホテルに引き寄せられていくところは、凄く盛り上がりますね。

そして、到着したら、「おおおおお~~~~~~~!!!!!」と見ていてテンションもフルスロットルに。

カメラワークなども『シャイニング』と同じで思わずニヤリ。

タイプライターが置いてある吹き抜けのロビー、血の海のイメージが浮かぶエレベーターホール、そして、ダニー達親子が住んでいた部屋。斧で割られたドア。

また、バーのカウンターが出て来て、あの軽快な音楽が流れると、懐かしいような、ゾッとするような、不思議な感覚になりました。

そして、ダニーがバーのカウンター越しに、バーテンダーのロイドとなった、父ジャックの亡霊と対決するシーンは、怖かったですが好きでした。

トラウマの中に住む父親に怯え続けた彼が、ついに、父親の亡霊に打ち勝ち、「シャイニング」の力を真に目覚めさせた瞬間でもあるのかなぁと。


そうそう。
あのホテルの大階段で、ダニーが敵の女と対峙するシーン。

斧を持って、応戦する彼の体勢も、また、カメラワークも、40年前の彼の母親と全く同じでしたね。

そして、階段から落ちて行くところや、そのあと、足を引きずりながらホテル内を動き回る姿は、彼の父親にそっくりで。

彼の原点となる場所での、彼の歴史を感じましたです。

ここに戻ってきてこそ、ダニーは前に進むことが出来たのではないかと思いました。



ボイラー室のシーンがあった時から、いや、全体を通して、ずっとハロルドの亡霊がダニーに語りかけていたところなどから、結末は予想していた通りで、寂しい結末ではありましたが。

けれども、「シャイニング」・・・「輝き」の力を昇華させ、そして、未来を見守り、繋いでいく、という希望のある結末でもあったと思います。

ホラーでありながらも、感動する人間ドラマでした。

原作の『ドクター・スリープ』は、何やら映画とは異なる点もあるそうで。原作も読みたいです。
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