このレビューはネタバレを含みます
この映画が指摘してるものは意外と深い。
現代社会における「祈り」の欺瞞性。
本来死を悼むという感情は個人的なものであるはずなのに、慣習的な儀式に組み込まれた途端、「亡くなった人を悼む」という普遍的なものに回収されてしまう。(もちろんそれは個人の悼みを普遍的な悼みに吸収することで、個人の悼みをやわらげる機能があると思うんだけど)
例えばそれは早く良くなってくださいと神に祈ること。お別れの会で先生から手紙を要請されること。その手紙をお母さんに見せて書き直させられること。
亡くなってすぐに置かれる献花。人の死に対する作業感。しかもその花は別に生前の友達の好みとかは何にも関係ない。
どれも本人のためなんかじゃない。儀礼的、形式的なもので、その儀式の中に友達はいない。そもそも神に祈ることもよくわからなかった主人公は終始そのことに違和感を抱き続ける。
祈っても助けてくれない神なら叩き潰して、主人公は青い花を手向ける。頼まれて書かされた弔辞なんかじゃない、せめてもの自分なりの葬送。
おじいちゃんは障子の穴からあの世を覗いていたのかな…美しくて悲しい映画。