HicK

mid90s ミッドナインティーズのHicKのレビュー・感想・評価

4.0
《堕ちていく姿に共感》

【好きな事に堕ちていく】
没頭できる何かを見つけた時の輝き。もっと知りたいと思う探究心・好奇心。好きなものが自分に与える影響。周りが見えなくなるほどの囚われ具合。…めちゃくちゃ分かる。自分は好みはそんなに変わって無いが、熱中具合は一緒。

【人生に堕ちていく】
言葉遣いから始まり、酒、タバコ、セックス。環境が徐々に人間形成していくという、堕ちていく推移に説得力があった。(堕ちるという表現が合ってるか分からないが、年齢を考えると。の表現)。とてもリアルかつ、スティーヴィーが純粋で真っ直ぐだからこそ落下速度が速い。冒頭とラストの彼の差が激しいが、それでもとても自然。納得いく変化。

【ルーベンくん】
ルーベンと仲が悪くなるスティーヴィー。親に愛され好奇心にまっすぐで勇気もあり、そこを仲間から買われてスイスイ昇進していくスティーヴィーと、一方、親に暴力を振るわれ、背伸びして頑張って唯一の居場所を守るルーベン先輩。この二人の対比と関係性が好きだった。ルーベンが嫉妬や憎さを覚えるのも分かる。

もしかしたらスティーヴィーの兄もルーベンと同じタイプだから合わないのかもしれない。

【サニー・スリッチ】
スティーヴィーを演じたサニー。カワイイ男の子からグレ堕ちの変化が本当に自然でうまかった。最初と終盤の喧嘩シーンを見比べると演じ分けがすごい。

13歳の子にはタブーな場面が多かったので、年相応かそれ以上に幼く見える彼にヒヤヒヤした。

【総括】
セリフを多用せず、説得力ある自然な変化を描けているのが素晴らしい。急激に何かの虜になった事がある人にとっては、スティーヴィーの変化に共感を持てると思う。どうしても幼い子の犯すタブーに目が入ってしまうが、彼が居場所を見つける物語として「クラスでグループを作る」にも近い普遍性もあった。

最後の演出は、仲間たちの等身大の無邪気さや"生身感"も感じられて、とても良かった。
HicK

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