keith中村

ジャングル・クルーズのkeith中村のレビュー・感想・評価

ジャングル・クルーズ(2020年製作の映画)
4.5
 ディズニーランドのアトラクションを映画化するって微妙だな~と思ってたけど、観たら観たできっちり面白く作ってあるんで、やっぱディズニー映画だけのことはありますね。
 
 というか、監督がジャウム・コレット=セラだったんですね。
 そりゃ、面白いわな。
 あとストーリー設計と脚本に5人くらいクレジットされてるから、そこもかなり練り込まれています。
 
 本作を一言で表すと「インディ・ジョーンズ的な冒険活劇」ってことになるけれど、そう思うと「インディ・ジョーンズ」シリーズがいかに偉大かと改めて認識できる。
 あれはもともとスピ師匠とルーク師匠が「サイレント時代の連続活劇みたいなのをやってみようぜ!」って始めた作品じゃないですか。つまり、連続活劇の時代から「レイダース」までおよそ70年間くらい、それこそ「冒険活劇」は山のように作られ、「冒険活劇」というジャンルはあったけど、「何々みたいな」とジャンルを代表して語られる作品はなかったということなんですね。
 でも、「失われた聖櫃」や「魔宮の伝説」以降、この手の冒険活劇は「インディ・ジョーンズみたいな映画」と括ることができるようになった。

 同じ頃に、マイケル・ダグラスとキャスリン・ターナーで「ロマンシング・ストーン」と「ナイルの宝石」の2作が作られたけど、その時点ですでに「インディの二匹目の泥鰌」感があった。
 いや、私はそっちも大好きですよ!
 ただ、今はもうあまり観られなくなった作品かもね。
 あと、「グーニーズ」も当時から、「子供版インディ・ジョーンズ」ってみんな思ったもんです。
 
 本作は、「インディ・ジョーンズ的な冒険活劇」ではありますが、シチュエーションは「ロマンシング・ストーン」のほうに近い。それに、現地のスキッパーを雇って川を遡上するってところは「ランボー 最後の戦場」と一緒だな。まあ、あっちは本作よりはるかに残酷でしたが。
 あと、川をひたすら遡ったり、ひたすら下ったりする映画は枚挙に暇がありませんが、男女のコンビってことでは「アフリカの女王」あたりの系譜なんでしょうね。
 
 例のアトラクションを映画化するにあたって、時代を1916年に置いたのはよい発明だと思いました。
 その点では「八十日間世界一周」を思い出しましたね。
 あれは、本作よりちょっと前のヴィクトリア朝時代が舞台だったけれど、本作の舞台である1916年でもまだまだ同じで、「超男尊女卑社会」のイギリス。
 本作と「八十日間~」は、「男尊女卑ざまぁ!」ってエンディングが共通してる。
 エミリー・ブラントが「リターンズ」で演じたメリポピさんは、さらにもうちょっと後の時代だったけど、オリジナルのアンドリュース版メリポピさんもヴィクトリア朝時代でした。
 この頃は、男尊女卑も甚だしいけど、それと同時に同性愛が法律で禁じられてたわけでしょ? 本作でジャック・ホワイトホール演じるマクレガーは同性愛者だと匂わせてましたよね。
(イギリスで同性愛が合法化したのって、本作の時代から半世紀後、実に俺が生まれる前の年なんですよね)
 
 だから、そんな時代を舞台にしたことで、ちゃんとPC的というのかリベラルな問題も提起しつつ、「安心して観られる現代のアメリカ映画」になってるところがいいです。
 族長が女性ってとこも、それね!
 
 キャストとしては、主役二人ドウェイン・ジョンソンとエミリー・ブラントのケミストリーが素晴らしい。
 いや、「CAST」じゃない。本作では、クレジットが「STARRING」でしたよ。
 昔の映画は全部これでした。「スタアとして出演!」ってニュアンス。威風堂々じゃないですか。
 エミリー・ブラントのイギリス英語は、ほんとに心地いい。おれ、アナ・ケンドリックのアメリカ英語と並んで、女性の話す英語として聴いてていちばん好きかも。
 ロック様は出自がスペインで、アマゾンにずっといたという設定なのに、何故かアメリカ英語でしたけどね(笑)。
 余談ですが、コンキスタドール時代の「髪の毛フサフサ+髭モジャ」のロック様、こないだの決闘裁判のアダム・ドライバーに結構似て見えました。ズラのロック様映画ってほかにあったっけ?
 
 本作の「ディズニー・ヴィラン」はロペ・デ・アギーレでしたが、映画史的には彼を描いた「アギーレ 神の怒り」がありましたね。あと、アマゾンを遡上していく映画で忘れてならないのが「フィツカラルド」。
 両方、ヴェルナー・ヘルツォークなんだよなあ。
 ってことは、もしや本作はヘルツォークへのオマージュなのかい?
 「小物ヴィラン」がドイツ人だったしね。