Kachi

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のKachiのレビュー・感想・評価

4.5
【最高の「若草物語」入門】

恥ずかしながら、今まで「若草物語」を観たことがなく今回が初めて。ストーリーもロクに知らない状態だったため、文字通り真っ新な気持ちで鑑賞。とても心地よい鑑賞体験となった。

四姉妹の織りなす物語を、過去と現在を行き来しながら重層的に理解させる構成がまずよかった。時系列に物語が続いていたら、きっと冗長に感じただろう。二つの時系列を交錯させながら、徐々に彼女らを取り巻く人間模様が立体的に浮かび上がり、さすがと言わざるを得なかった。

また、本作の舞台は「北軍」とか「戦争」といった言葉からも19世紀米国の南北戦争前後を描いたものと類推される。当時の女性観が前近代的であることは想像に難くなく、小説家を目指すジョーが社会規範としての「あるべき女性像」と「自己実現を目指す野心的な女性像」との間で揺れ動く姿は、まさに現代的な主題ともなり得るものだった。

加えて作中、ジョーが執筆することになる小説の結末部分を当時の要請に合わせて「仕方がなく」結婚というハッピーエンドにしたという着地も納得だった。実際、彼女も地元の彼との恋路に対して後悔しており、そこの描写もリアルだった。

初見の私でさえ本作は、次に来て欲しい台詞や次に訪れてほしい出来事が、まさにそのタイミングでシーンとして出てきてくれるので安心感がある。いわゆる「形式美」がそこにはあり、どの時代の人であっても一定程度は必ず満足できる王道の作品なのだと思う。

四姉妹のそれぞれは、彼女たちだけでも主役を張れるほどの実力派であり、「レディバード」や「ブラック・ウィドウ」、「美女と野獣」などですでに見慣れた彼女たちが総結集した点もいい鑑賞体験に寄与したのだと思う。

総じて、若草物語入門としてはもったいないほど良かった。
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