たけのこ

恐怖の報酬 オリジナル完全版のたけのこのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

故 水野晴郎さんが「いやぁー、映画って本当に面白いものですね」と言いながら出てきそうな王道の娯楽大作でした。

出自もバラバラな七人ならぬ四人の男たちが、田んぼならぬ油田を守るために起ち上がる構成には「七人の侍」を思い起こしました。まあこの四人には使命感というものはなく、単にお尻に火がついているだけですが。

以下王道ポイント。コテコテだけどそれがいい!

・観客を苛立たせる役回りを完璧に演じる現地のダッシュ青年。ウザいから早くそこドケよ!(笑)

・大木による通せんぼを切り抜ける大胆な機転

・「俺、故郷に愛する妻がいるんだ…」という分かり易い死亡フラグ

・反目し合っていた男たちが死の間際に見せる奇妙な友情

・そして何よりも例の吊り橋を渡るシーンでの緊張感とド迫力

人間あとが無くなると最後にはニトロを運ばないといけなくなるので、多少の不満があっても今の職場で働けることが幸せなんだなと割とガチで思いました。この映画を観た部下にであれば「お前もニトロ運ぶか?」というセリフが使えそうです。パワハラで訴えられそうですが。

なかでもセラノは立派だなーと思いました。あれだけ栄華な暮らしから身を落としてまでも逞しく生きる姿には頭が下がります。

あと現地の黒髪の女性の位置づけが今一つ分からず、逆に印象的でした。あれが美人女優だったりすると途端に駄作になりそう。思うに、人ってどんなに劣悪な境遇に置かれても、そこに良い暮らし/良かった頃の暮らしの面影を何とかして見出そうとするというか、きっと彼らは彼女の黒髪に文明社会の美しい女性の姿を重ね合わせることで自分の心を慰めていたのだろう、彼らにとって彼女は文明社会への憧憬という名前のマドンナだったのだろうと思う。そうでもないと普通であればあの彼女には行かないだろうし。

七人の侍で勝ったのは農民ですが、この映画で誰かが勝ったとするならば、地に足が着いた暮らしを送るあの彼女ということなのでしょう。道を踏み外した者に運命は非情。

(追記)
劇場の売店に限定品の「非情Coke」なるものが売っており、どう見てもただの瓶入りコーラにしか見えず何ゆえ?と思いましたが、映画本編を観てニヤッとしました。
たけのこ

たけのこ