ツクヨミ

ラ・ポワント・クールトのツクヨミのレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
1.3
ヌーヴェルヴァーグ史的には先駆的だが、いかんせん中途半端なヴァルダ処女作。
ラ・ポワント・クールトという漁師町にある男が返ってきた、彼は妻がやってくるのを待っていた…
アニエス・ヴァルダ監督作品。ヴァルダの処女作でヌーヴェルヴァーグ史的にも発端となった重要作であるそうな本作、いざ鑑賞してみるが正直映画としては中途半端な印象を受けた。
まず物語の舞台となるのは片田舎の漁師町、そしてそこに暮らす人々の息遣いが聞こえてくるような描写の数々が、ネオ・レアリズモ的でめちゃくちゃルキノ・ヴィスコンティの"揺れる大地"のようだ。そこにゆっくりとクロスカッティングするように別れ話をしまくる夫婦の会話劇が挟まれていく。基本室外撮影でまさに自主映画感が強く、当時の基本セット撮影なフランスに新たな風を吹き込んだんだなとわかりやすく感じるのが良い。しかし漁師町パートと夫婦パートどちらにしてもそこまで踏み込まず、内容が薄いような気がして仕方ない、夫婦の危機的な夫婦パートなんか小津安二郎的な内容なのになんでか薄っぺらく感じてしまうのだ。まあ"冬の旅"でも感情移入させない冷ややかさがありヴァルダ的に共通しているのはいいけど。
しかし撮影の点はやはりアニエス・ヴァルダ、"冬の旅"でも顕著だった移動撮影がなかなかに光る。オープニングの板のクローズアップからワンショットで町の路地をぐーっと見せたり、夫婦の散歩を足元を追ってみせたりしていたら夫婦を追い越し背景にフォーカスしたりと面白かった。撮影だけに関しては"冬の旅"に続く奇抜さが見えて好印象。
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