本と人とが紡ぎ出す田舎の朴訥ストーリー……かと思ったら、結構な不条理劇だった。
「華氏451度」は不吉な予感をはらませ、「たんぽぽのお酒」に切なくなる。
教養持たない者の顔のなんと醜いことよ。
反面、主役フローレンスがとても魅力的だった。穏やかな話し方、控え目な笑顔、理知的な視線、読書への情熱…それらが集約された美しさに、ひきこもり老人ビルナイが惹かれるのもムリはない。ビルナイも相変わらず渋カッコいいし。
少女クリスティーンの存在にも救われた。
監督インタビューによると、書棚に並ぶ本はレプリカではなく、数が必要なロリータ以外はほとんど本物の初版本を揃えたとのこと。ブラッドベリはこんな装丁だったのか、とか、ロリータは二冊刊だったのかなどを知れるのが楽しい。
トリュフォーへのオマージュとして「華氏451度」に出ていたジュリー・クリスティがこの作品のナレーターってのがまたニクいわ。