Laika

楽園のLaikaのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
4.0
重い。演技派の俳優によって、誇張されすぎている感はあるけど、多かれ少なかれ日本中の田舎に共通するものがある。
この地域のコミュニテイの中で生きていくには、自分の意思を捨て、周りに合わせて生きるしかなく、違う種類の人は存在を殺される。こんながんじがらめのコミュニテイの中で、負のスパイラルが巡り巡って、「あいちゃんはみんなが殺したんだ」と思う。
うちの田舎の母が、「そんなの常識でしょ」と言ったことがあり、その言葉に反発したことを思い出した。その「常識」はその地域の常識であって、「常識」という言葉の仮面を被った「同調圧力」だったからだ。その「常識」が、そこに住んでいる人々を攻撃し蝕んでいく。普通の顔をした住民たちが、自分たちの暮らしを守ため、異物を拒み、法に触れない残酷ないじめをする。そこにあるのは、「嫌われたくない」心理だろうか。「楽園」は「東京以外どこもおんなじ」ように、日本中に蔓延っている。
辛かったのは、罪がない犬までもが、悪者にさせられてしまったこと。何もされない飼い犬がいきなり人に噛み付いたりしない。噛まれた人に原因があるはずだ。外出禁止になりオリの中で汚れて涙を流している犬は、善次郎の本当の姿のようだ。善次郎は本当は哀れな姿で泣いているんだと思う。それすら表すことができずに、ただひっそりと生きていくしかない、そこは地獄だ。
子供の時にフィリピンから母に連れてこられたたけしに何ができただろうか。彼が自分の意思で、生きる道を選ぶことができただろうか。
汚れない犬が、全てを包み込んだ紡とつながったことが、この映画のラストで良かった。野上がガン治療を克服できたことは、紡の希望だ。どんよりと重い映画で救いようがなく、2時間が苦痛だったけど、終わった後にこれだけ考えることができる映画だから、いい映画だ。
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