Laika

生きちゃったのLaikaのレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
4.0
映像やセリフがサバサバしていて、外国映画のようでかっこいい。
武田を除く厚久の周りの人(妻、父、母)は、ズケズケとものを言う。ちょと刺さるようなナイフの言葉を日常的に発している。目の前の人からこんな言葉を受け取ったら、自分もナイフの言葉を返すか黙るかのどちらかになってしまうと思う。
私も怒ったり反論したい時は、すぐに表すことができず、黙ってしまう。「大事な時に言葉が出なくなる」が、私はわかる。言語化されていない自分の感情を自分で整理しなければならない時がある。

引きこもりの兄、甘い言葉で仕事を斡旋し借金をさせる闇の人、子持ちバツイチでもう行くところがないという弱みを持つ女性の家に転がり込むヒモの男、デリヘル嬢にさせながら「バーカ」という異常な男性、息子が収容された刑務所に面会に行った後、家族写真を取ろうと古いカメラを持ち出す父親。その写真に息子のいる刑務所をおさめたがる母親。滑稽で、醜くて、スマートな人たちは見てみぬふりをするような部分をこの映画はあえて見せている。会話がぶっきらぼうに聞こえたけど、でも実際の生活の中のコミュニケーションってこんな感じがする。そういう意味でリアルで、今の日本を表しているのではないか。

不協和音のように、ざわざわとした感情を持ちながら見て、最後の武田との車の中のシーンが、この映画の全てだと思った。二人のぶつかり合いに泣いた。それまで武田は不幸が続く厚久を支えていたが、ここで厚久の感情に挑発し、目を覚まさせる。武田も覚悟しての行動で、この時の武田の涙が優しい。
厚久はこれからもう大丈夫だと思う。武田が友達でよかった。
「外国語だと自分の思うことを言える」は、納得できる。
全てをズケズケいう人種には、わからないかもしれないけど、言えない私たちは、相手に対して興味がないからではなく、逆に相手が大事だから、だからすぐ言葉にできないことだってあるんだと言いたい。
Laika

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