Laika

MOTHER マザーのLaikaのネタバレレビュー・内容・結末

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

想像通り長澤まさみがすごい。
ダメ母、鬼母、男にだらしない怠け者。育児放棄だけど、子どもに手を出したりはしない。自分のダメさも全て子供の前でさらけ出し、僕がいないと生きていけないと子どもに思わせる。この親子関係は母と息子の共依存で、ある意味これも虐待と言える。涼が現れ、蟻地獄のような借金のスパイラルから抜けられなくなる。
働かずにパチンコに通い、いつもお金がない状況が私には理解できない。まずは、「働けば」と思う。アルバイトでもパートでも、働かずに誰かに寄生しながら、それまで生きてこれたことがすごいなと逆に思う。
「自分の産んだ子どもをどう育ててもいいでしょう」というのは、親のエゴだ。生活保護員が何も言えなくなっていたが、親は子どもを学校に行かせる義務がある。秋子は自分が嫌いで自信がなく、だから子どもを自分の分身として自分のものとして支配する。周平が勉強に目覚め、借金取りに追われてもその部屋に残りたいと言ったとき、秋子は「みんなに嫌われてる、臭いと言われてる」と言って、息子の気を学校から遠ざける。彼が自立しようとした芽を摘むんでしまう。
途中何度も周平が助かる道があるのに、彼は最後までお母さんを選んでいく。母親という魔物だ。幼い頃の周平は、母親から離れることイコール一人ぼっちで孤独で死ぬことを意味していて、何かにすがるように、この母親の後を追うしか生きる道がなかった。修平に優しくする大人を秋子は鋭く突きはねる。医務室で生活保護員が子どもと引き裂こうとしたときに暴れた秋子の姿は動物の雌親のようだった。そんな秋子に周平は近寄って肩に手を置く。周平は、どんなに貧しくひもじい思いをしても、母といることが安心なんだ。
少年院の面接室で「僕お母さん好きなんです」と彼はいう。本来甘い言葉であるのに、この映画ほどこの言葉が突き刺さるものはない。
この言葉を生活保護員から聞いた秋子は無表情だったが、心の中では何を思っていたんだろう。わからなかった。これから秋子は自分の足で生きれるよう頑張るのか、又、周平を支配し続けるのか。
どんな育て方をしても「母」に変わるものはなく、子はその運命を受け入れるしかない。母という甘い存在は時には母という悪魔にもなる。
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