DarkKnightK

ジョーカーのDarkKnightKのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.7
「虚構と現実、悪と正義の狭間で」

かつて腐りきったゴッサムシティはそれこそコミックの中での遠い二次元世界のことであったが、コミックが現実に近づけてきているのか(かなりそういう部分はあると思うが)、はたまた現実がコミックに近づいてきているのか、近年その差は縮まってきているように思う。ジョーカーはそんな狭間で生まれた怪物。映画版ではこれまで絶対悪として描かれてきているが、コミックではその誕生については諸説語られてきた。本作ではウェイン家とジョーカーの浅からぬ因縁が描かれているがその中でも「まさか?!」というトンデモ設定まで登場。そんな発想も面白かった。結局、ジョーカーがバットマン誕生の引き金となったことも見逃せない。「楽しいことなんて今まで一度も無かった」というアーサーがジョーカーにならざるを得なかった悲しさ。本当は同調することがあってはならないのだが、それでも同情を禁じ得ないホアキンの演技の素晴らしさ。作品としては特にジョーカーの大悪行が描かれるではなく、ジョーカー誕生までの話が淡々と描かれ、そしてついにゴッサムに反乱の火の手が上がるところまでを描いているのだが、富裕層VS貧困層、正気VS狂気という図式はまさに現代社会の縮図。鬱屈した社会に不満が漂っている今だからこそ出来た作品なのではないか。

事前情報を入れないようにして観に行ったのでデニーロが出てきて、しかも「キング・オブ・コメティ」へのオマージュにも驚いた。バットマン映画では主役よりもとかくヴィランズが話題となりがち(本作ではバットマンそのものは出てきませんが)。それだけにホアキンも出演に二の足を踏んだというが新たなジョーカー伝説が誕生したことは間違いない。
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