RenAlLotus

ジョーカーのRenAlLotusのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

意外とジョーカーだったね!

おれバットマンに対して推しカプ厄介女オタクみたいになってるからバットマンとジョーカーの関係とか出自に関していろんな解釈違いが発生して泣いちゃうんだけど、これは割とよかったです

まず前情報とか予告で懸念してたのは、ジョーカーが「辛い過去の影響で狂ってしまい悪の道に染まった」みたいなやつで、俺はジョーカーって悪のカリスマなんだから骨の髄まで混沌/悪じゃなきゃ嫌だ!って思ってて、
でこの映画観ながらもかなりずっとそれに関してはハラハラしてて、「障害のせいで虐げられた→悪!」とか「トーマス・ウェインに裏切られた→悪!」みたいな安易な方向に行ってしまうのではというのをずっと心配してたんだけど、

いや、実際ジョーカーというキャラクターに特に変なこだわりがない人はこの映画最後まで観ても障害や裏切りが悪堕ちの理由だって思うかもしれないし、そう捉えれば分かりやすくて観やすい映画だと思うからそこはすげー上手い

それはともかく、最後の方で「俺が笑ってたのは病気じゃなくて、これが俺なんだ(→本当に面白くて笑っていたんだ)」みたいな旨のことを言ってた、とおれは解釈して、
そうするとつまり、生まれてこのかたアーサーにとってストレスフルな状況だったり何気ない出来事だったりが"本当に面白くて"大爆笑してたってことになるんですよ。もう(ほぼ)生まれながらの狂気ってことですよ、最高じゃない?

ジョーカーにさ、「悲しい過去があったんだね〜(;;)」みたいなチンケなお涙ちょうだいはやっぱり似合わないじゃない?やれトーマス・ウェインに裏切られたから復讐してやるとか、もちろんそれが今回の映画ではジョーカー誕生のきっかけのひとつではあるんだけど、
「ひどいことをした(人を殺した)瞬間スッキリした」って言って、しかも結論としてその理由を「苦しい環境のせいで自分の性質が変化し、狂ってしまった」とするんじゃなく、「俺は元からこうだったんだ、それに気付かなかっただけだ」と、まあ少なくともジョーカーはそう自認してるわけだ
「俺の人生は悲劇だと思っていたが、喜劇だった」というのもつまり、世間一般ではまさに悲劇としか言えない境遇で、辛いのに笑ってしまう病気だと思っていたんだけど、そうじゃなく、自分が苦しんだり人が死んだり、それが心の底から面白く思えるという性格だったんだ俺は、だから俺の人生は俺にとっては面白いんだと。

で、他のバットマン作品とかと照らし合わせても、「ストレスを受けると笑ってしまう」というのはジョーカーの性格に説明をつける上で割と筋が通ってて、ジョーカーってよく大怪我したり殺されそうになったりしてる場面で大爆笑してる演出があるんだよね

ここからまた厄介なんだけど、「ジョーカー本人が自分の狂気を生まれつきと捉えていること」と「実際にジョーカーの狂気が生まれつきであること」はまた別の話で、俺は後者に関してはどっちでもいいと思ってるんだよね
というのも、これはどの作品でのことか忘れたけども、バットマンに「お前の狂気は偽物だ 作られたもの(生まれつきではない)だ」と突きつけられてジョーカーが狼狽するっていうシーンがあった気がして、それはバットマンとジョーカーの関係の結末としてアリだと思ってるんです
ジョーカーは「俺は悪、お前は善の方向に生まれつき狂っている似た者同士だ」って言うんだけど、それに対して「お前は生まれつきじゃない、環境で悪人になってしまったちっぽけなチンピラだ」と告げてライバルとしての絆が終わるっていう

なので、この映画ではその、「狂気が生まれつきかどうか」みたいなのがハッキリどっちかに決まる演出ないんだけど、そこは別にいいのだ


というのが前から懸念してたことだったんだけど、もうひとつ、今度は観始めてから昇ってきた懸念が、「バットマンとジョーカーに並々ならぬ因縁がある」という話になってしまうことで
ティム・バートン版バットマンのレビューで書いたんだけど、俺あの「ブルース・ウェインの親を殺したのは若き日のジョーカー」「ただのマフィアの一員を狂わせてジョーカーにしたのはバットマンの行動」という相互に因縁があるのものすっっっっっごく嫌いなんですよ バットマンのせいでジョーカーになるのはコミックとかでは割とメジャーな解釈っぽいけど
まずバットマンとジョーカーの誕生がそれぞれ1人の人間への憎悪から始まってたら、それって相手を倒した時点でもうスッキリして終わっちゃう可能性あるじゃないですか
ダメ!バットマンはヒーローなんだから、個人的な復讐心じゃなく全ての悪を憎み、無償の善をやってなきゃいけない!ジョーカーも悪のヒーローなので逆も然りなのです

というのもそうだし、バットマンとジョーカーはそれぞれ別のとこで無償の善悪をやってたところたまたま出会って、互いが表裏一体なことに気づき呼応しあって「最悪の敵」という絆ができるのがいいんですよ
たとえば生まれた時からの許嫁が結婚したってそれ本当にお互い好きなのかな?ってなるじゃないすか、それと同じで、因縁があったらそりゃ憎み合うの当たり前なんだから、そうじゃなく真っさらな状態から深いとこの対称性によってのみライバルになってほしいのだ すいませんねほんと細かくて

この映画では最終的に、アーサーとブルースが異母兄弟かどうかは観客の解釈に委ねられた形だし、バットマンとジョーカーは互いの誕生に直接は関わってないんだよね
おそらくこの世界線のブルースは最初、ゴッサムにはびこる悪を憎むことはしても、「両親を殺したチンピラが参加していたデモの引き金になったジョーカーが憎い!!!」とかそんな回りくどい思考でジョーカーを他のヴィランより特別視することはないと思うんですよね
でジョーカーといえばバットマンの正体を知らないことが多いし、仮に知っても「子供の頃のお前にマジックを披露してやったな〜」とか「異母兄弟かもな〜」くらいにしか思わないだろうし、TV出演の時も自分とトーマス・ウェインとの因縁の内容を濁したくらいの人が「もしかしたら因縁があるかも」という程度のことはおくびにも出さんだろうというね!安心!


さあ、懸念が晴れたというプラマイゼロの話は終わったのでこっからは最高だったことを話しましょうや?
まず!アーサーが悪に向かったきっかけとブルースがこれからバットマンとしての人生を歩むきっかけが同じく「拳銃」だというのがメッチャよい アー
そしてホアキン・フェニックスが超スキニーなのもグッド だいたいアニメとかコミックスとかでもジョーカーは痩せてますからね
アーカム・アサイラムに収容されて終わるのも最高 もうこっから直でハーレークイン誕生に繋がるじゃん
あとは〜〜ジョーカーを祭り上げるチンピラが描かれたのもYEAH ダークナイトとかではあんまりそういう演出なかったけど、カリスマとしての、でも神格化されすぎるでもなく「俺たちのボス」として慕われるジョーカーって解釈の作品もけっこうあるし、そういうの好きなんですよ



メッチャ言ったけどなんかたぶんマジのアメコミファンからしたら「今更ジョーカーの解釈で何騒いでんの、全部別物として愛せよ」とか「オメーが好きとか言ってる解釈それ最近の一部の作品だけだからこれが王道みたいに語るな」とかあるんだろうな マジでごめんなさい死にます
RenAlLotus

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