「ある種の恐怖を覚える」
というコメントが氾濫している話題作であるが、果たして観劇者は本当に恐怖を感じているのであろうか。
おそらく大半が主人公であるジョーカーの生い立ちや境遇に共感を覚えたが、当の本人は暴力で自己を確立してしまったからであろう。
しかしながら、この作品における主役と恐怖の対象は、観劇者自身なのかもしれない。
劇中にもっとも多く出てくる登場人物は、荒廃していくゴッサムシティの経済と治安に嘆く市民である。
そして、ジョーカーの暴利的なカリスマ性にあてられた市民の多くが、仮面を被ることで暴力を振るうこととなる。
ヒトは匿名性を得ると感情的に、より自身の愉悦を求めるように行動してしまうのであろうか。
だからこそ、観劇者自身は気づかなければならない。自らもいつでもジョーカーという仮面を被ることができるということを。
