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ギャベのmareのレビュー・感想・評価

ギャベ(1996年製作の映画)
4.0
イラン映画といえばキアロスタミが異質な作品を放つようにマフマルバフの今作も異質で独特な国民性を感じる。遊牧民である娘が狼男のような声を出す男と恋に落ちるというストーリーだが、それ以上にギャベ=絨毯の色彩の豊かさが織りなす映像美は圧巻で目が行ってしまう。丹念に織られた情緒あふれるギャベの色彩の広がりに原初的な喜びさえ頭をよぎる。ギャベのブルーが川のせせらぎと共鳴したり、色彩の授業のシーンで空想の花畑に伸びる手がそのまま花を引き寄せて空に伸ばした手がそのまま青に染まったり、美しくも斬新でユーモアあふれる演出の数々はイランでしかなし得ない感性の賜物だろう。どうしてもパラジャーノフのざくろの色と比較されてしまい謎に評価が低いけど、あちらは煌びやかなイメージの混濁なのに対して、こちらは遊牧民の質素な暮らしと色彩映像美を重ね合わせている点で興味深い傑作だと思う。
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