ガチョビン

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女[完全版]のガチョビンのレビュー・感想・評価

3.5
絵画のようなオープニングが絶妙にネタバレ気味。寒い北欧の辺鄙な土地、田舎の歪んだ名士の一族。被害者だけでなく犯人も身内だろうと思われる40年前の事件解決の依頼。スウェーデン本国の方にとっては犬神家のようなお話しの感じなのかな。ただそこは凡庸で、そこに、相棒になったリズベットのキャラの強さで成り立っている絵かな、という印象。

以下詳細。
犯行の様子は羊たちの沈黙などどこかで見たようなよくある「怖い犯人」の像。謎解きも、40年前&田舎なのでアナログで未解決だったもので、現代のデジタルな情報収集と謎に万能なハッキングだと普通でサクッと進むし、平凡さと都合良さも感じる。危険な行動を取ってダメージを負うイベントを無理に起こさなくても、データ照合、監視カメラ等で普通に犯人特定・解決は時間の問題だったようで、必然性はあまり見えてこない。聖書、数字→特定の章の内容という暗号もありがちで、敬虔なクリスチャンもいるであろう中、今日まで担当刑事含め誰も思いつかなかったというのも何だか現実味がなく、そそらない。
そこで、別にストーリーに何の関係もないけど内外共にかなりクセのあるリズベットが目玉になって、演技や、思い過去を背負うが故の言動の不安定さが魅力として光る。し、実際事件解決の比重はミカエルよりリズベットのほうが断然大きい。彼女のキャラ描写のために、不愉快なレイプシーンなども入り、リズベットがズタズタになる展開が目を引くためだけに入るのも何だか物悲しい。
名探偵カッレ君はそんなリズベットに幸運にも組んでもらい、何か関係を無責任に持って、終わったらまた何も考えずにミレニアム社のエリカとの関係も継続して仲良く過ごして、と、何だか流れに乗っただけの軽薄な印象も。
こんなだと、過去は無理に尋ねない、今の君がいてくれてよかったというリズベットに対するピロートークも、絆があったって言うほどの思いはこもっていないなぁ、という感じがしてしまう。追いかけもしないし、連絡してよと言うものの去る者追わずという感じで。リズベットがこの件やミカエルに心血を注いだのと釣り合う感じがしない。凡庸な男と凡庸なミステリーが、キャラの立った有能ヒロインに気に入られて相棒化するに値するだけの何かを彼女に示しただろうか?何だかそういうのがそんなに見当たらないのである。

リズベットが元々突き放している部分があるし別に一途でもなくドライなので、それが独特なこの二人の距離感、そういうバディもいいよねというふうに捉えることもできるのだろうが…。「ミレニアム」とミカエルがメインの三部作ですと言われても、なんだかな、という感じ。主演男性の演技は良いだけに、個人的には残念。
続編でそこらへんが多少変わるのかな?