ガチョビン

アザーズのガチョビンのネタバレレビュー・内容・結末

アザーズ(2001年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

大昔レンタルで観たのを再視聴。原題”the others"、この場合、theがついている複数形なので自分(達)以外の「他全て(の者達)」を指す。無論本作では更に、この家にいる自分達とは異なる特定の何か達という意味合いであろうが。
どこか最初から違和感を感じさせる気味の悪い洋館、開幕早々の使用人のやり取り。不自然な館のルール。シャイニングの子供と親のやり取りを思い出すような母と子二人のやり取りや変わった子どもたちの特性…。ヒステリックで力強く存在して見せるニコール・キッドマンの存在が、希薄でないかろうじての人間さ・リアリティを感じさせるのは良い采配。追い詰められたシングルマザーの独特のストレスと張り詰めた性格が持ち前の美貌にあっていて、観ていてツラいが演技は映える。
自分達の視点から見た"the others"の存在を次第に意識し始めるが…向こうからすればやはりまた自分達も"the others"であって。自分達がどちら側だったのか?その逆転が起こるまで、特にグロテスクなシーンや不必要なショッキングも使わず、終始静かめでトーンを抑えた恐怖感を伝えてくるあたりがかえってうまく「十分に感知できないthe others」の存在感を伝えてくる。(いくつかなぜ?というシーンがあるが。子供の老化と旦那は結局何だったのかはハッキリとしない)
ストーリーの怪異現象が絡んでいた部分を取り去ると、残るのは、戦争や孤立した環境、第2次世界対戦当時のイギリスという今より恐らく理解の得られない時代に、小さな子供二人を抱えて孤軍奮闘するあまりに追い詰められ誤った方向に踏み出してしまった母親に、(あえて信心深くあった母の信仰を借りるて表現するのであれば)神がやり直しの慈悲を与え、もはや生死としては手遅れで自分達はthe othersになってしまったけれども、ようやくあるべき親子の形、愛にたどり着かせ、張り詰めていた心を解きほぐしその呪縛から解放させた…という「母の物語」だとも感じる。

最終的に館にはthe othersが住み続け、成仏もしないというおどろおどろしい結末の結末ではあるものの。そうした「怖いね」で終わらない、悲しみは伴うものの一定のカタルシスを持つ終幕であるからこそ、面白い映画となったのだと個人的には思う。
他作と比較してどちらが良い悪いというのもアレだが、シャイニングは子供に能力があるとはしたし館に多くの亡霊がいるとしたものの、怖いね、取り込まれてパパは半狂乱で向こう側に行っちゃったね、という、恐怖の館語りだけで終わってしまった。それ比べると、違いはハッキリとしており、映像美やキューブリックを追いすぎないのならこちらのほうが個人的にはスキ。