じぇれ

コンフィデンスマンJP ロマンス編のじぇれのレビュー・感想・評価

3.9
【ダー子一味はルパン一味の域に】

今回のお魚ちゃん(カモ)は香港の女帝。用意周到に女帝の懐に入り込むが、かつてのお魚ちゃんや恋人が現れて、さぁ大変!

今もっとも信用できるエンタメ系脚本家・古沢良太の最新作にして、人気ドラマの映画化。
といっても、連ドラを観ていない一見さんにも優しい親切設計なのでご安心を!
また、海外ロケを最大限活かして、スケールアップもしっかり果たしています。

さて、誰もが騙されるという触れ込みの本作ですが、私はと言えば......序盤の台詞と演出がきっかけで大枠は完全にわかってしまいました。
(先日の2時間SPはタネ明かしまで気づけなかったんですけどね)

しかしですね、騙されはしなかったんですが、しっかり面白かったんですよ。
というのも、本作はキャラクターが皆イキイキとしていて、彼らを観ているだけで元気になれるんですよね。

そもそも連ドラの時から、騙しという点では波がありました。
でも、それは仕方がないんです。
だって、”コンゲームもの”だと明かしてしまっているんですから、観る者は身構えてしまいます。
だから、その内気付いてしまうんですよ。
どれだけピンチに見えても「必ず最後にダー子は勝つ」んだなと。

そんなことも計算に入れているであろう古沢良太は、あの手この手でフェアに騙しにかかりながらも、同時にもう一つの計画を進めていました。
そう、ダー子一味をコミカルに描くことで、かの名作『ルパン三世』と同じ構造を内包させていたんです。

視聴者は皆ルパンが鮮やかに逆転するのを待っていて、予想通りの展開であっても爽快感を得て満足します。
同様に『コンフィデンスマンJP』の鑑賞者は、たとえ大仕掛けに騙されなかったとしても、ダー子一味が巨悪を倒す様を今か今かと待つ体質に変えられちゃってるんですよ。

つまり、”コンゲームもの”と見せかけて、その実”勧善懲悪もの”なんですねぇ、『コンフィデンスマンJP』という作品は!
まさに「目に見えるものが真実とは限らない」を地でいく周到さ。
古沢良太、恐るべし!

というわけで、ルパン一味に負けず劣らずキャラ立ちしたダー子一味の活躍を、安心して楽しみましょう!

※どの回に騙され、どの回に見抜けるかは、観客ごとに違いがあると思います。

※本シリーズで最も評価したいのは、どの回も(勿論この映画版も)フェアに騙そうとしていること。
嘘は絶対に描かないんですね。
「いや、あそこは嘘だったぞ!」と思った方は見直してください。
必ずアンフェアにならないよう工夫されているはずですから。
じぇれ

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