みーちゃん

暗数殺人のみーちゃんのレビュー・感想・評価

暗数殺人(2018年製作の映画)
4.1
キム・ユンソクが見たくて観たら、なかなか渋くて熱い作品だった。連続殺人事件、サイコパス、警察などのキーワードで連想する、いわゆる韓国のサスペンス映画とは一味違い、良い意味で予想を裏切られた。

キム・ユンソクとチュ・ジフンの役作りが素晴らしいのは勿論、監督は本作の準備に6年もかけたとのことで、なるほど、脚本が緻密に練り上げられている。

でも衝撃や衝動とは裏腹に、冷静な視点で表現が抑えられているので、観客に地味で物足りないと誤解されるリスクがある。これは勇気がいる演出だと思う。派手なシーンを入れるスキルはあるのに敢えてしないという選択が、作り手の自信と信念を感じさせる。

実際、オープニングのスピーディーな展開が鮮やか。そこで一気に惹きつけておきながら、その後は停滞し、ぐるぐる回っているように見える。そこにストレスを感じる人もいるかもしれないが、私は逆にリアリティとキム・ヒョンミン刑事の内面を感じ取ることができた。

決め手が子供の存在なのも良い。彼の捜査の原点と、犯罪者の因果応報を物語っているようで感動したし、それが、カン・テオの人間的な部分には全く刺さっていないだろうと思わせる、虚しさとのバランスが絶妙だった。