むっしゅたいやき

伊豆の踊子のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

伊豆の踊子(1963年製作の映画)
3.5
西河克己監督作品。
原作は言わずと知れた川端康成。
大胆に改編され、またエピソードも追加挿入されてはいますが、高橋英樹、吉永小百合、浪花千栄子といった役者陣の名演もあり、時代感も感じられる良作です。

本作に就いて、原作自体は数多の方が読み語りされているので特に述べる事はありません。
ただ少し残念だった点も有ります。
高橋英樹は余りに真っ当、イケメン過ぎて、原作主人公のひね媚びた性格が溶解して行く様が有りませんし、ラストの別れも船の上からのみとされ、更に「私」の歪みが哀惜と共に涙となって流れるラストシーンはカットされています。
この為、原作に見られるカタルシスは少々スポイルされており、原作に拘泥する必要は無いものの少々物足りなさが残りました。

しかし当時の日本、格差と差別が単純明快ですね。
現在はどちらも有る癖に複雑に隠蔽されているので、ある意味潔くすら見えます。
懐古主義でもありませんが、『生き辛い世の中』を振り返らせられた作品です。
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