空海花

運び屋の空海花のレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.6
2019MyBest振り返り


イーストウッド監督主演。
それが久々に拝めるということもあり期待は心配するほどかなり高かった。
何よりまずこのポスターがかっこよい。

外見は確かに90歳近いおじいちゃんなんだけれどやっぱり身のこなしが違うというか、オーラが違うというか。
飄々と車を運転する姿、音楽・風景も最高だ。

これを観たちょうど一ヶ月前「グリーンブック」を観た。
どちらも珠玉のロードムービーかつ社会派作品だった訳だが、描き方が全然違う!
「グリーンブック」ではマハーシャラ・アリ演じるシャーリーへの仕打ちに、当時どれだけの行為があったかが垣間見えて、胸が痛んだ。
しかし本作では「おいおいじいちゃん」と言いたくなるような場面があるもののこちらを叩きのめしてくるような演出はない。
もちろん時代も状況も異なるので、比べたい訳ではない。
ただ麻薬カルテル、マフィアが拡大する社会には侵略や支配、差別の歴史があり、そこに蔓延っている背景を感じることができる。
アールは老いた白人の退役軍人で、なかなか捕まらない。
但し一見なら描かれているのは破天荒おじいちゃんだ(笑)この軽さに重たいものをぶっ込んでくる技量とブラックユーモア(と言っていいのか?)にもうなんだこれ!これは自身で演じてもらわないとってやつだ。

そして観ながらイーストウッド自身の人生を想起させられる。
実話を基にしつつ、自伝的。栄光と大金と数多の女性関係。家庭を顧みるというイメージはさすがにない。
物語ではいくら稼いでもお金で買えないものがあることにアールは気付く。それは気づいたところで簡単には手に入るものではない。
それでも気付いた以上、彼は止められない。
障害が入るが、今度は諦めない。
元々頑固おじいちゃんだからね(笑)

実際に自分の相手がそんなだったら、イーストウッド様であろうともムリだろうな…
でも最期にこうして寄り添ってくれるなら、わからない、許すだろうな。
はい、妄想をすみません(笑)

元より豪華キャストではあるが
何よりブラッドリー・クーパーとの対峙は胸熱。
中盤のやりとりも含め。
イーストウッドの意志が込められたラストシーンはぜひ多くの人に拝んでいただきたい。
やっぱり本人主役は特別なのだ。
ひしひしと感じる快感。

デイリリーの栽培にニヤリとし
エンディング曲に泣く。
最後までニクい作品。


2019劇場鑑賞23本目
2019MyBest⑥
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