ミーハー女子大生

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のミーハー女子大生のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

原題の『Knives out』は「複数のナイフが鞘から出た状態」つまり喧嘩で「ナイフを抜いて敵意を見せ合う」の意味らしい。  

著名なミステリー作家のハーランが死体で発見される。
状況は自殺だが、自殺の動機が見当たらない。
事件の前日に彼は、長女リンダに浮気を教えると夫リチャードに警告する。
その息子の問題児ランサムの援助を打ち切る。
次男の妻ジョニが孫メグの学費を二重取りしていたことを知り、学費を打ち切る。
彼の著作の版権を映画会社に売ろうと考えていた次男ウォルトの出版社の社長から首にするなど、ハーランは家族と対立していた。
他殺なら、誰かがハーランを殺したのか。
また、彼の莫大な遺産を巡って、家族が対立する。
原題の意味はこれかと感心した。  

実は看護師のマルタが、ミスでハーランを死亡させる原因を作ってしまった。
ハーランはマルタが犯人と知られないように、偽装工作をマルタに指示する。
死ぬと分かってすぐに、自分の死の偽装トリックを考えつくとは,さすがミステリー作家だと感心した。  

この事件を捜査する探偵はダニエル・クレイグ演じるブノワ・ブランであるが、質問に対し、家族がつまらない事を言い始めると、「ピーン」とピアノの鍵盤を叩いて止めさせるなど、かっこいい。  
ブノワは、遺産相続に関係なく中立な立場のマルタに協力を依頼する。
彼女は嘘を言うと吐く体質なので、真実しか言えない(吐き気を我慢して嘘を言った時もあったが)というのも面白い。
でも、マルタは、事件当日に自分が付けた足跡をわざと踏み消し、監視カメラのビデオテープの画像を磁石で消しと、自分が犯人だと言う証拠を消して捜査を妨害するのが可愛い。
さらに、マルタがやった事が真実ではなく、ランサムが細工した真実はその裏にあったと分かって感心した。  

さらに、彼女は遺言状により全財産を相続することになった。
ハーランが彼女を守ろうとしていたのは、献身的に尽くすマルタへ感謝して全財産を渡すので、彼女が犯人になってはいけないという愛情だったと知って感動した。
また、彼女に「家族同然」と優しく言っていた家族たちが、遺産を全部マルタがもらうと知って「遺産を返せ」と攻め寄るのは、人間は醜いと思った。  

最後の場面でマルタが「我が家、我がルール、我がコーヒー」のマグカップを持ってバルコニーから家族たちを見下ろす場面は、冒頭の場面とオーバーラップし、皮肉が効いて面白かった。  

屋敷には屋根裏部屋への隠し階段、外から登れる隠し窓、応接間には無数のナイフが飾られ、邦題に付いた「名探偵と刃の屋敷の秘密」の副題が、珍しく映画に合っていると感心した。  
家族全員が容疑者。
自殺の偽装トリック。
真実と思ったものの陰に別の真実がある意外性。
匿名の依頼主は誰で、その目的は何か。
ハーランのマルタへの愛。
あっちこっちに散りばめられたユーモアなど、とても素晴らしい。

ストーリー 4
演出 4
音楽 4
印象 4
独創性 4
関心度 3
総合 3.8