NAO141

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のNAO141のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

映画史に残る作品となった『ジュラシック・パーク』(1993年)から30年の時を経て、シリーズは遂に本作で完結となる。
監督は『ジュラシック・ワールド』(シリーズとしては4作目にあたる)のコリン・トレボロウ(この作品もなかなか面白かった)。そして製作総指揮を務めるのはシリーズの生みの親スティーブン・スピルバーグである。出演者も豪華で歴代のキャストが大集合!なんとアラン・グラント博士役のサム・ニール、イアン・マルコム博士役のジェフ・ゴールドブラム、エリー・サトラー博士役のローラ・ダーンの3人が揃った姿を見ることが出来るのは、あのオリジナル作『ジュラシック・パーク』以来である(30年ぶり!)。これはファンにとっては嬉しいことだ!!新旧キャストがバランス良く配置された見応えある作品だった(個人的には新登場の元空軍パイロットであるケイラ・ワッツが一番のお気に入りだが笑)。本作は劇場版でも約147分となかなか長尺だが、Blu-rayにはエクステンデッド版が収録されており、こちらは約161分。どうせなら集大成作品としてBlu-ray長尺版を堪能したいところ笑。でも迫力という点では映画館で観るべき作品である!

本作の冒頭、ティラノサウルスが闘っている相手はシリーズ初登場となるが、史上最大の陸上肉食恐竜ギガノトサウルスである。〈ギガ〉なんて名前がついている時点で…うん、強そうだ笑。この恐竜、実はオリジナル作(1993年)が公開された年にその化石が発見された実在の恐竜である!オリジナル作公開年に発見された恐竜が集大成の本作で暴れまくる、粋だなぁ~笑。よく見るとティラノサウルスには羽毛のようなものが生えていることが画面から確認出来る。現在の研究では、恐竜には羽毛があったという説が有力視されており、最新の研究結果が作品に反映されているのもいいね!(今後さらに研究が進んだら、恐竜は我々の知っている恐竜の姿ではなくなったりして…笑)。そしてこの物語冒頭、倒されてしまったティラノサウルスに一匹の蚊が近づき、そして血を吸っている。そう、これこそが『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』すべての始まりと言える。この蚊が琥珀に閉じ込められ、6500万年後に恐竜が甦ることになった。本作の冒頭がまさにシリーズの〈エピソード0〉的な部分になっているのだ。冒頭からワクワクしちゃう!

本作は過去作へのオマージュも沢山あり、特にオリジナル作への愛が感じられる。本作に登場する巨大企業バイオシン。この企業のCEOはドジスンという人物だが、あなたは覚えているだろうか!このドジスン、オリジナル作冒頭に登場し、ネドリーという人物となにやら悪巧みをしていた奴である。登場時間はわずか数分であった奴が本作でCEOにまでなっている!笑。めちゃ出世しとる笑。彼はオリジナル作でネドリーに恐竜の胚をスプレー缶に入れて盗むよう依頼していた。この計画はネドリーが恐竜に襲われて失敗したが、本作、なんとその時のスプレー缶が回収されているではないか。オブジェのように飾ってあった笑。そしてドジスン、本作では自身がネドリーのような行動をするが、そこにやって来たのは…来ました来ましたディロフォサウルス!!笑。あのオリジナル作でも印象的だったエリマキトカゲのような恐竜である。鳴き声も独特で鳴き声が聞こえた瞬間にオリジナル作と当時のビビった自分を思い出した!笑。そしてドジスン、哀しいかなネドリーと同じ顛末に…。ディロフォサウルス、なんだか悪人を退治する必殺仕事人のような活躍を本作でもまたまた見せてくれた!笑。といった感じに本作はオリジナルへの愛が詰まっている。本作のテーマは〈いかにして共存するか〉であるが、少し大げさに言えば、本作は過去作を否定するわけでもなく、まったく新しいものに作り替えるでもなく、過去作を尊重しつつ新たな一歩を踏み出すという、まさに〈新旧の共存〉とも言える作品に仕上がっている。

このシリーズは人間の傲慢さに対して警鐘を鳴らすようなメッセージ性も込められている。シリーズのある意味では一番の功労者のような一番の罪深き人間のような登場人物としてウー博士がいるが、彼は本作で巨大イナゴを自らの手で滅ぼした(本作、ある意味では恐竜よりもイナゴがインパクト強すぎ!笑)。犯した罪に対して「もう手遅れだ」と諦観者に陥るのではなく、科学者が正せる過ちは自身の手で償う。これもまた一つの結論だろう。オリジナル作から登場し、マッドサイエンティストにも見えたウー博士だが、彼には彼なりの苦悩もあり、本作で彼が自ら過ちを正そうとしたこと、そしてそれが集大成作で描かれた事はなかなか粋であり、本作が警鐘と共に過ちとどう向き合うかをメッセージとして伝えているようにも感じた。作中、エリーはクレアにこんな事を言っている、「過去に引き摺られると前に進めなくなる。大事なのはこれからどうするかだ」と。我々は現実の世界でも、いま未知のウイルスに世界中の人間が苦しめられている。しかしこれも、我々が彼らの領域に踏み込んだ結果招いてしまったものだという研究者もいる。であれば、我々はどうするのか、支配するのか、支配されるのか、あるいは〈共存〉の道を選ぶのか。このシリーズは我々に〈いまからどうするのか〉を問い掛けているような気もする。

個人的な残念ポイントはブルーとモササウルスの活躍をもう少し見たかったという点だけだが、ブルーとの距離感はあれくらいの方が現実味はある気もする。ブルーがあまりにもオーウェンを信頼しきっている姿を描くとかえって嘘っぽくなる。あれくらいの付かず離れずの距離感。しかし互いを信頼する絆はどことなく感じる、ラストがそんなシーンになっていたのは良かったな。

このジュラシックシリーズを観て育った世代が今では研究者になり、この数十年でかなりの新種恐竜が発見されているという。非常に夢と浪漫のある話だ!!
多くの人に観てほしいシリーズである!
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