チッコーネ

幸福都市のチッコーネのレビュー・感想・評価

幸福都市(2018年製作の映画)
3.7
鑑賞者から観ると未来~現代~過去へと遡る構成。
前半はいくつかの装置だけで、無理なく未来を感じさせる。
中盤には庶民的ながらも危うい魅力を放つフランス人女優が登場。
アジア人である主人公とのカップリングで刹那の逃避行を繰り広げる展開からは、80年代仏映画への憧れが感じられた。
またバスの車中で、傷だらけの主人公が彼女の肩にもたれる絵は、明らかに『ブエノスアイレス』へのオマージュ。

全く関係のない女性が出てきたのかと思わさられる後半も動的でスリリングだが、主人公に繋げるための仕掛けとしては、ちょっとあざとすぎたきらいあり。
しかし一本の線を繋いだ事で、辛酸を舐めてきた彼の死と、その人生の中にある美しい一夜の記憶が、改めて際立つのは確かだ。

ロケ中心だが、台湾らしい風景はあまり出てこない(韓国ロケ分もある様子)。
しかし粗い質感の映像はスタイリッシュ、全体的にセンスと志を感じさせる作品なので、ロマンティストな監督の他作に期待。